研究課題
究極的な厚さが単原子・単分子レベルに達する二次元結晶ナノシートは,その軽薄短小性を利点にエレクトロニクスや材料科学など様々な分野での応用が期待され,注目を集めている。本研究では,配位性の鎖を三重に束ねたらせん金属錯体群を合成し,これを構成要素として用いた,可逆に剛直性が変化する多機能性ナノワイヤ・ナノシートの開発を目的とした。前年度までに,ナノワイヤ・ナノシートの基本ユニット構造となる四級炭素ピボット型らせん錯体の合成を行い,その構造と自己集積挙動を明らかにした。本年度はこの錯体をナノワイヤ・ナノシート合成のための二叉・三叉錯体ユニットへと展開するため,四級炭素ピボットにTIPS保護されたアルキンを修飾した新規三重鎖配位子を合成した。得られた分子は前年度合成したフェニル置換型の配位子と同様に,鉄(II)イオンとモル比1:1で錯形成した。また,対応するRu(II)錯体の合成にも成功した。これらの金属錯体を各種ジアミンと2:3のモル比で反応させたところ,ジアミンの種類によってビシクロ型二量体と正四面体型四量体のいずれかが選択的に生成することがわかった。次に,三重鎖配位子のTIPS基を除去し,末端アルキン同士のホモカップリング(二量化)を行なったのち,鉄(II)イオンと錯形成させることで,二叉錯体ユニットを合成した。得られた二叉金属錯体を用い,ジアミンとのシッフ塩基形成によるポリマー合成検討を行なったところ,赤色の不溶性沈殿が得られた。この懸濁液をHOPG基板上にキャストし,AFM測定を行なった結果,ポリマーに由来すると思われるネットワーク構造が観測された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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