研究課題/領域番号 |
17H06553
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山田 有希子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (90344910)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 哲学 / 倫理 / 自己決定 / 終末期 / 生命倫理 / 医療 / 医療者支援 |
研究実績の概要 |
申請者は、自治医科大学付属病院の治験審査委員の活動、および、栃木医療センターの緩和ケアチームの活動に参加する中で、患者の自己決定をめぐる倫理「学」と医療現場とのギャップ問題にたびたび直面してきた。「学」の領域で、いかに「自己決定」「ケア」「インフォームド・コンセント」等の理論的研究が蓄積されても、それが肝心の医療現場にはほとんど反映されていない現状がある。とくに終末期医療においては、患者の自己決定(権)がさまざまな事情から成立しえない症例が少なくなく、患者の「最終段階」に寄り添う医療スタッフは、自身の納得のいく医療に専念できない、医療チームとの連携の上でのジレンマ等、悩みが深い。 本研究では、そうした問題について、「哲学」の立場からの問題解決の可能性を模索するものであるが、29年度は、(1)中・長期的に、栃木医療センターでの「自己決定支援マニュアル」つくりの支援を念頭に置き、(2)その準備段階として、関連する各種アンケート調査・分析を実施した。また(3)月一回、同緩和ケアチームの定例カンファレンスに参加し、その中で、医療者向け「医療倫理勉強会」の試みを継続し、具体的な「問題」に関して、哲学的概念整理の方策を提示した。その他、(4)デス・カンファレンスの方法改善をめざす同病院の千嶋巌医師の委託を受け、同病院でのデス・カンファレンスに関するアンケート調査・分析を実施した。関連し、自治医科大学付属病院緩和ケア病棟で実施されているデス・カンファレンスに関する看護師を対象としたインタビュー調査を行った。また、(5)また、終末期医療における患者の自己決定権に関しては、法的問題からのアプローチは欠かせない。それゆえ、医事法の専門家による医療者向け講演会を、宇大異分野融合研究助成との共同企画において実施した(18年2月 樋口範雄先生「終末期医療におおける患者の自己決定権について」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は計画していたアンケート調査の実施、医療者向け定期的勉強会はほぼ予定通り実施された。しかし、医療倫理の文献研究の進捗状況は芳しくない。ただ、研究協力者(村上恵理先生(栃木医療センター)、高橋信行先生(國學院大学)他の助言・協力のもと、当初の計画になかった取り組み(「終末期医療における患者の自己決定権に関する講演会」 2018年2月 樋口範雄先生(武蔵大学)、宇都宮大学における学生向けの死生学教育の講義 村上恵理先生 (栃木医療センター)2018年1月)も実施できた。そのため、本研究の目的に照らし、地域社会における終末期医療の充実のありかたについて、および、そのための市民教育的観点からのアプローチ等への展望もでき、総合的にみて、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究方法としては、これまで通り①医療倫理に関わる学術的専門研究(国内外の文献研究 今年度は「ケア」「自己決定」「終末期(人生の最終段階)」の概念研究)を進めるとともに、②参加中の緩和ケアチーム(栃木医療センター)のカンファレンスにおける医療者との交流を通じ、実践的な症例研究も重ねていく(終末期医療における患者の自己決定支援の取り組みにおける問題点の分析)。①と②を架橋するため、主に看護師・薬剤師を中心とする医療倫理勉強会を通じ、医師とは違う立場でより身近に患者と接する医療者の方々が抱える問題を抽出し、それらの問題を医療倫理学の知見から整理・検討し、問題解決に向けた方策を模索する)。
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