小児急性骨髄性白血病(AML)は未だ予後不良な疾患であるが、治療反応及び分子生物学的異常に基づいたリスク層別化治療により、長期生存率は60-70%まで向上した。しかし小児AMLは極めて雑多な集団である。特に乳児のAMLでは治療強度の軽減による治療関連死亡の回避や、造血幹細胞移植の回避による治療後遺症の軽減が必要であることから、本研究では特に乳幼児症例に絞って遺伝子及び臨床データの解析を行った。 日本小児白血病リンパ腫研究グループAML-05研究に参加した症例の余剰検体を用い、乳幼児AMLの特徴や予後について解析を開始した。更に先行研究であるAML99研究のデータも加え解析した。 小児AMLの年齢別の特徴を解析すると、形態診断では3歳未満でFAB分類のM4、M5、M7が多く、また融合遺伝子解析では3歳未満でKMT2A遺伝子再構成、CBFA2T3-GLIS2、CBFB-MYH11、NUP98-KDM5A融合遺伝子が高頻度に検出された。これらの結果から、3歳未満のAMLを「乳幼児AML」と独自の疾患群として定義し詳細な解析を行ったところ、上述の融合遺伝子のKMT2A遺伝子再構成とCBFB-MYH11は乳幼児だけでなく年長児においても検出される融合遺伝子であるが、予後解析では両者は乳幼児と年長児で大きく異なる予後を持つことが判明した。この結果から、乳幼児と年長児にそれぞれ特化したリスク層別化治療を検討する必要があると思われた。 既知の遺伝子異常が特定されなかった症例においてはRNAシークエンスを施行した。計39種類の新規融合遺伝子を同定した。癌遺伝子やがん抑制遺伝子としてよく知られている遺伝子を含む融合遺伝子が多数同定された。これらの融合遺伝子に実際に造腫瘍能があるか現在解析中であるが、高頻度の融合遺伝子は一つも同定されず、今後異なった解析手法での分子生物学的異常の探索が必要である。
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