研究実績の概要 |
肩こりは、精査をしても原疾患がみつからない不定愁訴として捉えられてしまうことも多い。その原因として、病態を可視化できないことが考えられる。そこで、原発性肩こりを客観的に定量的に可視化し、評価することを将来的な目標とし、本研究では非侵襲的に頚部周囲筋の筋弾性を評価した。 筋弾性・硬度の計測には、従来、押し込み式の筋硬度計が用いられていたが、筋以外の影響(皮下脂肪)を大きく受ける問題や、深層に複数の筋が存在するときに、選択的に評価をすることが難しいという問題があった。この問題を解決するため、近年、超音波画像を用いて筋弾性を評価する超音波エラストグラフィーが、非侵襲的評価法として注目されている。今回、手動で加圧して筋のひずみを計測するstrain ultrasound elastographyを用いた。筋弾性を定量化するために、既知のひずみ度が分かっている音響カプラーを用いて、そのひずみに対する、筋のひずみをStrain Ratioとして計測し、その信頼性の検討に、級内相関係数(ICC)を用いた。 22名の健常被験者を対象とし、僧帽筋、棘上筋、それぞれのStrain Ratioを計測した。2名の整形外科専門医の検者内および検者間信頼性を検討した。 検者内信頼性の指標である検者1、2のICCs (1,1)は、僧帽筋で、0.67、0.51で、信頼性はmoderateからsubstantialだった。一方、棘上筋では、0.70、0.75で、信頼性はsubstantialだった。また、検者内信頼性の指標であるICC (2,1) は僧帽筋で0.62、棘上筋は0.69と、ともに信頼性はsubstantialだった。 信頼性を高める必要はまだあるものの、筋弾性の評価法として、臨床応用も可能になりつつある。肩こりの病態の可視化に向け、研究をすすめる予定である。
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