研究課題/領域番号 |
17H06560
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
永井 遼 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (00801672)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | DAQシステム開発 / 光検出器 / ニュートリノ |
研究実績の概要 |
南極深氷河の大規模ニュートリノ検出器IceCubeのアップグレード計画IceCube-Gen2のための新型検出器開発の一環として、本研究では検出器のフロントエンドシステムの開発を進めている。本年度は新型検出器に物理的に合致するデザインの信号処理基板を開発し、評価を行なった。この基板には14bit, 250MSPSのアナログ・デジタル変換回路(ADC)が2つとFPGA、CPLDが搭載されており、光電子増倍管からの信号を適切にデジタル変換して精度良く波形を取ることが求められる。まずは、実験室にアナログ信号を基板に入力してFPGAから波形を取るための設備を構築した。FPGAから信号を受け取るためにはファームウェアの構築が必須であるが、既存のFPGA評価ボードを用いて単純なファームウェアを開発した。この最初の基板には多数の不具合が見つかり、修正に時間を要したが、最終的にADCからのデジタル化された信号の波形を正しく受け取ることに成功した。基板の完成の際にはIceCubeグループ会議において成果を報告し、今後の方針について議論を交わした。今後は実機に用いるための実用的なファームウェアを構築し、最初の基板で評価していくとともに、次年度に予定している改良版に向けて準備を進める。 新型検出器に搭載される光電子増倍管の高電圧制御は信号処理基板に搭載されたCPLDを用いて行う予定であるが、その最初のプログラムの開発に着手した。高電圧を印加する回路の開発は順調で、本年度中に実機に合わせた基板が完成し、光電子増倍管からの想定する信号を取得することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発した最初の信号処理基板に予期しない不具合が多数見つかり、この修正に当たった。回路図上と基板上の両方から不具合箇所を特定し、最終的に修正を行うことができた。多くの不具合は基板上で物理的に配線し直すなどすることにより解決できるものであり、それほどの時間は要さなかったが、不具合のうちの1つは物理的に修正することが不可能であった。これについては解決法として新たにファームウェアを作成することで修正することを考案し、FPGA上で不具合を解消することに成功した。このため、この開発に時間を要したというのが、現状の進捗の主な原因である。このパッチ・ファームウェアは次年度では不要となるように基板を改良する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
信号処理基板で正しく信号を読み取れることが確認できたので、今後は擬似データを用いた取得波形の評価を行なっていく。具体的には、信号の時間分解能、ダイナミックレンジ、波高分解能が要求性能に対してどれくらい満たしているかを解析する。また、低温での実用性能の維持も重要であるため、マイナス50℃まで冷やせる冷凍庫を用いて長期安定性を評価する。高電圧制御システムについては、現在の高電圧印加基板と信号処理基板を接続した試験を進める。 これらの試験の結果をもとに、30年度中に改良版の基板及びFPGA, CPLDに組み込むファームウェアを作成する。また、実機として使用するための総合的な評価を改良版の基板を用いて行う。 研究推進に当たっては、KEK Open-It及びウィスコンシン大学マディソン校、ペンシルベニア州立大学と緊密に連携して進める。
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