研究課題/領域番号 |
17H06562
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
丸田 一輝 千葉大学, 大学院工学研究院, 特任助教 (30801170)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | アダプティブアレー / ブラインド型アルゴリズム / 干渉抑圧 / 周波数共用 / Massive MIMO |
研究実績の概要 |
本研究では,様々な電波干渉を克服し周波数共用を実現するための手法として,事前情報の不要なブラインド型アダプティブアレーを検討の対象とする.H29年度は以下の検討を行った. (1) まず干渉を効果的に抑圧するためのアレー信号処理・制御に関する基礎検討として,各種ブラインド型アルゴリズムの特性比較を行った.新たなアプローチとして,独立成分分析(ICA)の一種であるRobustICAと事前処理であるビームスペース法の併用が干渉抑圧性能および収束性ともに安定かつ優れていることを見出した. 100素子規模のアンテナを有する基地局にて通信を行うマルチビームMassive MIMOシステムにおいて本手法が特に有効であることを明らかにした. (2) ブラインドアルゴリズムは受信信号を用いた最適化処理によりウェイトを導出するものであるが,これは初期状態に大きく依存する.そこで,多素子アンテナを備えるシステムにおいて,ブラインドアルゴリズムを安定的に動作させる初期値の与え方としてアンテナ選択という簡易な手法を提案し,その有効性を明らかにした. (3) ブラインドアルゴリズムの応用のひとつとして,同一システム内の干渉抑圧のための検討を行った.Massive MIMOシステムにおいて既知のパイロット信号を用いた伝搬路推定ではその干渉抑圧性能に制限があり,セル内のユーザ間干渉とセル間干渉ともに抑圧できない問題がある.これに対しブラインドアルゴリズムを適用することでMassive MIMOのアンテナ自由度を活用し上記の干渉を同時に抑圧可能とする手法を提案した. (4) これまでに検討してきた異なる無線通信システム間での周波数共用方式において,信号対雑音電力比(SNR)が低い状況において提案手法の動作を補償することを目的として,サブキャリアごとに変調多値数を可変とする手法を導入し,その効果を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では基礎検討を中心に行った.(1)これまでブラインドによる干渉抑圧手法として定包絡線アルゴリズム(CMA)が有効な手段であったが,16QAM以上の多値信号にはその性能が低下する傾向にあった.RobustICAは多値信号に対しても安定して優れた干渉抑圧効果が確認できており,さまざまな検討への応用が期待できる.(2, 3)加えて,ブラインド型アダプティブアレーは多素子アンテナ(Massive MIMO)との併用により新たな効果を生み出し得る点に着目し,研究成果を得ることができた.これらの成果は雑誌論文に投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り検討を進める.(1)については,フェージング環境を想定した,より詳細な特性評価を実施する.(3)についてはQPSKでの有効性検証にとどまっているため,16QAM以上の多値信号導入時の性能評価を実施する.(4)については若干の性能改善検討にとどまったため,今後は異なる無線通信システム間での周波数共用時の特性評価についての評価を進める.また,ここまでの他の検討で得た知見をもとにさらなる性能改善の着想に至っており,併せて検討を進める予定である.ハードウェア実験のための環境整備も含めて検討を進める.
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