最初に、昨年度に構築した腫瘍溶解ウイルスであるマウスIL-9発現シンドビスウイルスを治療に用いるために、ウイルスの安定性と増殖性を今研究で樹立したオボアルブミン発現腫瘍細胞(SCC7-OVA)で確認した。 そこで、免疫を有する担癌マウスモデルをSCC7-OVA細胞株とCH/3マウスで作製し、IL-9発現シンドビスウイルス(SIN-IL9)と、野生型シンドビスウイルスウイルス(SIN-ov)の腫瘍溶解効果の評価を行った。SIN-IL9、SIN-ovを腫瘍内投与にて治療を行なったところ、非治療群と比較し、腫瘍の増大が有意に抑制された。しかし、SIN-IL9とSIN-ovの両治療群で差は認めなかった。次に、SIN-IL9治療群の脾臓細胞内の免疫細胞(CD4、CD8、CD4+Foxp3+、CD8+Foxp3+、MDSC、B cell)を解析した。SIN-IL9治療群では、非治療群と比較し、CD4+細胞が多く、CD4+Foxp3+細胞、MDSC、B細胞は減少していた。さらに、SIN-IL9、SIN-ov治療群の腫瘍抗原に対する獲得免疫能を評価した。脾臓細胞に対し、抗原であるSCC7、SCC7-OVAで刺激し、IFNγを検出するELISPOTアッセイを行った。両治療群では、非治療群と比較し、SCC7、SCC7-OVAに対するIFNγを発現する細胞数が多くみられた。特にSIN-IL9はSIN-ovより腫瘍免疫を活性化していた。 以上のように、IL-9発現シンドビスウイルスは、in vivoにおいて腫瘍に対する治療効果と獲得免疫を活性化することを示した。また、腫瘍溶解性ウイルスと同時にIL-9を発現する効果はCD4+細胞の増加と腫瘍免疫をより活性化することであると推測できた。以上から、SIN-IL9は腫瘍溶解ウイルス治療への応用が示唆できた。
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