ヒトは日常生活において様々な時系列情報を処理している。本研究では、その中でも最も知見の限られている「代数的時系列パターン」と称される“Algebraic patterns(AP)”に着目し、その時系列情報処理に関する脳機能メカニズムを明らかにすることを目的とした。本年度は、昨年度取得した29名の健常者(18歳-25歳,女性12名)の脳波データに対して、引き続き解析を行った。 昨年度の成果により、代数的時系列構造を有した音刺激提示中に、後頭、頭頂、側頭を中心とした電極において、low beta(10-15 Hz)オシレーションの強い振幅増大を観察していた。今年度は、これらの指標を特徴量とした機械学習を行い、AP音シークエンスを聞いている際の脳データと非AP音シークエンスを聞いているときの脳データを機械学習的に分類出来るか、検討を行った。その結果、low beta(10-15 Hz)オシレーションを特徴量とした場合に、もっとも安定してデータを分類出来ることが明らかになった。また、他の帯域を特徴量として用いた場合、low-betaに近い周波数を持つオシレーション(例 アルファ)ほど、統計的に有意に両データ分類出来る傾向も併せて明らかになった。しかしながら、その弁別率は約6割程度と低く、計算アルゴリズムも含めて、今後さらなる検討が必要であることが明らかになった。本研究の研究成果に関しては、ベルリンで開催された国際学会Forum of Neuroscience 2018においてポスター発表を行い、その成果は現在論文投稿中(査読中)である。
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