2017年度は仮説の妥当性を検討するために、ミャンマーとタイのケースごとに、エネルギー資源開発によってもたらされた統治空間について「ローカル」「地域」「ナショナル」のスケールごとに調査した。ともに現地でのステークホルダーへのヒアリングを通じて主に一次データの収集を行った。ただし、ミャンマーについては2017年後半以降のロヒンギャ問題の発生のため、ヒアリングを通じた一次データの収集は遅れた。
具体的に、タイでは主にPTITをカウンターパートとして、エネルギー省やチュラロンコン大学にヒアリングを行い関連資料の収集を行った。また実際に環境運動を行ってきたNPOなどのヒアリングも行った。また、上記の理由でミャンマーでのヒアリングは当初計画より遅れたものの、ミャンマーの専門家へのヒアリングなどを行い適宜補完した。また、これらのヒアリングに加えて、関連文献(資源紛争、関連地域研究)のサーベイについては完了した。
当初想定していた下記仮説の現地での妥当可能性については概ね確認した: 1)天然ガスや水力といったエネルギー資源開発はレントの不公正な分配を理由として、不利益を受ける地元住民との間に社会的な溝を生む。2)その溝に、「環境」の名の下に成長著しい都市の市民団体が介在する結果、イシューがローカルからナショナル・スケールに拡がる。3)結果的に、資源紛争は国民国家の「ナショナリズム」に関連する意味を持ちうる。
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