研究課題/領域番号 |
17H06586
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉見 崇 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (30805106)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 中国 / 中華民国 / 中国国民党 / 憲政 / 人身の自由 |
研究実績の概要 |
2017年度は、まず本研究と関わる先行研究を精査し、その問題点と課題をより明確にすることに努めた。その際、本研究と直接関わる先行研究だけでなく、政治過程史研究や政治外交史研究もあわせて検討した。なぜなら、中国国民党政権期の憲政への移行と人身の自由という課題を考察するためには、当該期の政治過程や対外関係についても、十分注意する必要があると考えたからである。 そのうえで、本研究は、1936年に発表された中華民国憲法草案(いわゆる五五憲草)および1947年に公布・施行された中華民国憲法の起草・制定過程において、人身の自由をめぐって、どのような議論が展開され、いかなる決定がなされたのかについて、明らかにすることを、具体的な課題として設定し、分析を進めた。 そして、本研究は、以上の課題を明らかにするため、2017年度、台湾・台北の国史館(蒋介石個人文書、国民政府文書、国民大会文書など)や中国国民党文化伝播委員会党史館(国民党の会議記録など)などの文書館、国家図書館などの図書館において、史料調査・収集を行った。その結果、憲法(草案)をめぐる議論や決定の詳細な過程を掴むことができたと同時に、そうした議論や決定に大きな影響を与えた政治的要因や対外的要因についても、理解を深めることができた。 今後、2017年度の研究を通じて得られた成果を、学会・研究会の場で報告し、論文として発表していく。さらには、2018年度に計画している「提審法」や「保障人民身体自由弁法」の分析を進めていく際、憲法(草案)との相互関係性を明らかにすることにつなげたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で記したように、本研究は、2017年度の研究を、研究実施計画に基づきながら、進めることができた。そのため、本研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、研究実施計画に基づき、1935年に公布された「提審法」および1944年に公布・施行された「保障人民身体自由弁法」の立案・制定過程を中心に分析する。 具体的には、第1に、国史館(蒋介石個人文書、国民政府文書、行政院文書、司法行政部文書など)や中国国民党文化伝播委員会党史館(中国国民党の会議記録など)で史料調査を実施して、中国国民党政権内で人身の自由をめぐってどのような議論が展開され、法案についていかなる対立や選択が存在したのかを詳細に跡づける。そして第2に、米国・英国の国立公文書館で史料調査を行い、米国と英国が、中国国民党政権期の憲政への移行と人権保障について、どのように評価していたのかを明らかにする。
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