研究課題/領域番号 |
17H06590
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
數村 友也 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 助教 (50804960)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | オークション / 耐戦略性 / 対称性 / 収入最大化 |
研究実績の概要 |
本年度は,収入を最大にする複数財オークションの解明を行う.同じテーマの研究はこれまでに多く存在するがいくつかの問題を抱えている.特に過去の文献の根本的な問題として,分析の複雑で明確な結果が得られていないという点が挙げられる.実際,過去の結果は様々な仮定に依存している.さらに,過去の研究では,現実的ではない単純な状況のみを分析をしており,現実への応用は程遠い. これに対し本研究では,これまでの文献とは異なるアプローチを用いた.それにより,現実への応用にも耐える結果の導出を試みた.具体的に,インセンティブの条件として支配戦略誘引両立性と個人合理性に焦点を当てる.これらは人々の選好の分布に依存しない条件で,これまでの文献で考えられてきた条件より強いものである.さらに,本研究ではインセンティブの条件以外の条件を課す.現実のオークションにおいて,参加者を差別的に扱うことは社会的に許容されない.この観点から,本研究ではマイルドな公平性の条件を課す.本研究で課した条件は対称性と呼ばれ,同じ選好を持つ人々を同等に扱うことを要求する. 以前より上述のアプローチで分析を行ってきたが,これまではオークション参加者が財の評価値が限りなくゼロに近い選好を持ち得ると想定してきた.しかし例えば主な応用先である周波数オークションでは,企業にとってどのような周波数帯も一定以上の価値があるはずである.この点を克服するため,本年度はオークション参加者がどの財に対しても一定以上の評価値を持つ場合を検討した.結果として,そのような場合に,留保価格が存在しないという仮定の下,支配戦略誘引両立性,個人合理性,対称性を満たすオークションの中で収入を最大にするのは最小価格ワルラスオークションである事を明らかにした.この結果を論文にまとめディスカッションペーパーを発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収入を最大にする複数財オークションの解明は極めて困難である事が知られている.実際に数十年前からこのテーマの研究が行われてきたが,明確な結果が得られていなかった.これまでの研究では多くの仮定がなされていたり,単純な状況しか扱えていなかった.一方で本研究では,これまでの文献のような仮定は存在せず,さらに一般的な状況で結果を得た.この点は大きな前進と考えられる. また,本年度の研究結果をまとめた論文はすでに国際雑誌に投稿中である.このような点から,本年度は重要な進捗があったと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では,各個人が1つまでしか財を受け取れないと仮定してきた.そのような仮定が妥当な状況は存在するものの,そうでない状況も存在する.今後の研究では,各個人が複数の財を受け取る事ができる環境の分析を行う.より具体的には,まずは財が全て同質のケースを扱う.また,可能であれば財が異質のケースの分析を行う.
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