研究実績の概要 |
メンタルヘルスと労働時間の関連を調べた先行研究では回顧データを用いたものが多く、脱落変数バイアスへの対処が十分なされていない。本研究は日本の製造業企業の人事データに含まれる客観的な日次勤怠データを利用し、固定効果操作変数法を用いて、働き方(残業時間、深夜勤務時間、勤務間インターバル11時間未満回数、土日出勤回数)の4つの指標とメンタルヘルスについて、包括的な検証を行った。得られた成果は以下の通りである。 ホワイトカラーについては、残業時間の多さと土日出勤回数の多さが、メンタルヘルスの悪化と有意に関連していた。ブルーカラーについては、残業時間の多さのみが有意にメンタルヘルスの悪化に関連していた。勤務間インターバルの短さは両サンプル共に有意な関連は見られなかった。以上の結果は、職種によってストレスとなる働き方が異なることを示唆する。そして、少なくともホワイトカラーにおいては、日毎の休息時間の確保よりは週末のまとまった休息時間を確保する方が、メンタルヘルスにとって効果的である可能性がある。これらの結果を元に論文を作成し、査読付雑誌に投稿中である。 分析と平行してレビュー研究を行い、その成果を下記の査読付き論文として発表した。 佐藤香織(2018)「労働者のメンタルヘルスと働き方改革」日本健康教育学会誌、26(3),283-290.
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