研究課題/領域番号 |
17H06593
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
開田 奈穂美 東京大学, 大学総合教育研究センター, 特任助教 (10801863)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 環境 / 社会学 |
研究実績の概要 |
この研究の目的は、諫早湾干拓事業を事例とし、有明海沿岸地域における漁業者および、諫早湾内の干拓地における農業者と漁業者を対象として、開発事業の被害を、事業そのものによる利益や事業による損害に対する補償といった受益/受苦という観点だけからでは描ききれないものとして捉えなおすものである。また、これまで受益者/受苦者として捉えられてきた農業者/漁業者の生活のあり様の変化の実態を解明し、彼らが置かれている状況について分析するものである。 本年度は、行政資料の分析およびインタビュー調査、関連する社会運動についての参与観察を行った。その結果をふまえた分析を行い、以下の注目点が析出された。1)市街地における治水機能と、平野部における農地の利水機能の区別がつけられていないために生じている問題を明らかにすること 2)諫早湾口部において、潮受堤防およびそこからの排水が漁業に与える影響についての公的な議論がない理由とその背景を明らかにすること これらの着目点を踏まえて、当該地域が事業によって得たメリットとデメリットの実態の解明を進めた。地域社会における議論が不在のままで、事業の是非が社会的な対立点として継続する中、農業者や漁業者といったが事業のメリットやデメリットをどう把握しているのかの実態解明に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象となる地域では現在も当事者による訴訟等が係争中であるため、諸事情により調査や資料収集に遅れが出たが、全体的にはおおむね順調に進展している。 国内において、環境学や行政学、法学など多様な分野から本事例を研究する研究者とも連携を取り、研究会において発表や議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
調査や資料収集の結果を踏まえて分析を進めるとともに、国内の他分野の研究者とも連携をしながらより多角的な観点から調査研究を進める。長崎県や佐賀県における現地調査に加えて、東京都で行われている国会議員のための勉強会等でも参与観察を行う。また、研究結果を踏まえた学会発表についても積極的に行っていく。
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