本研究で取り扱う諫早湾干拓事業をめぐる問題は、長期的な社会紛争であるにもかかわらず、政治的・行政的・司法的、いずれの観点からも解決の兆しが見えず、適切に処理しきれていない。本研究においては、混乱した社会紛争についての実証的研究を通じて、当事者である農業者および漁業者にとっては何が問題となっているのかを明らかにするものである。また、農業者および漁業者の状況を俯瞰的に見た場合に、彼らを取り巻く防災技術の実施状況に不均衡が生じていることを明らかにした。これにより、紛争の解決のためには、当事者が生業を成り立たせるために必要とされる防災技術を適切に施していくことが重要であることを指摘した。
|