研究実績の概要 |
本研究の目的は人口動態を考慮にいれた階層間格差を捉えることにあった.本年度では格差の趨勢のメカニズムを解明することが主目的だった.特に,女性の格差に関して,学歴獲得に関する分析を行った. この目的はおおむね達成されたと考えられる.人口動態を考慮した格差趨勢のメカニズムの解明は,昨年と同じく東京大学の白波瀬佐和子教授と東北大学の瀧川准教授と共同研究で遂行した.社会階層と社会移動調査(SSM調査)を用いて,Song and Mare(2015)の指標を用いて格差の趨勢を記述した.その後,その変化の内容を母親・父親,また母親についてはさらに出生力・到達確率の変化によるものへと分けるように要因分解を行った.要因分解にはKitagawa(1955)の方法を用いた. 要因分解の結果,高学歴と低学歴の間には到達確率の格差によって,高学歴間(母四大と母短大)では出生力の格差によって,格差が引き起こされていた可能性が示唆された.これらの成果は,数理社会学会やInternational Sociological Association, RC28 Social Stratificationの2019 Spring Meetingにて報告を行った. また,本研究のスコープである結婚・家族の領域で1つの研究成果が得られた.昨年に引き続き,家庭内の夫婦の親密性を相互行為に基づいて潜在クラス分析によって定式化・分析を行った.分析結果は,日本社会学会や東大社研の二次分析研究会で報告を行った.
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