研究課題/領域番号 |
17H06606
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 昌樹 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (40806402)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 津波堆積物 / 鬼界アカホヤ噴火 / 火山性津波 / 津波シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では,大規模カルデラ形成時の津波リスク評価に向けたモデルケースを確立することを目的として,7300年前の鬼界カルデラ噴火によって発生した津波規模の解明を試みる. 本年度は,既に所持していたアカホヤ津波堆積物コアの分析を進めた.具体的には,イベント砂層が津波によって運搬されたものであることを識別するために,堆積プロセスを推定するための粒度分析,砂層の内部構造を観察するためのCT画像撮影,そして供給源を推定するための地球化学分析を行った.また,アカホヤ津波堆積物の空白域である九州地方西岸のデータを得るため,長崎県五島列島においてハンドオーガーを用いた掘削調査を行なった.しかしながら,五島列島の沿岸域は沈降量が大きく,アカホヤ火山灰層の層準まで掘削することができなかった. 津波シミュレーションについては,東京大学地震研究所の計算機で「JAGURS」というプログラムを使用した.まずは,カルデラの大きさと崩壊時間を仮定して数値計算を行い,アカホヤ津波堆積物が見つかった地点に到達するのにかかる時間と津波の高さを推定した.その結果,60分かけて崩壊した場合には,カルデラ崩壊の約150~180分後に和歌山県や徳島県,別府湾沿岸地域に3 m以下の津波が到達し得ることが明らかになった.現在は,カルデラ崩壊のパラメーターを変えながら繰り返し数値計算を実施している.加えて,火砕流の流入による津波シミュレーションにも取り掛かり始めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
五島列島における野外調査では期待した成果が得られなかった.しかしながら,津波シミュレーションに必要な最低限の地質データは他地域において揃っているため,今後,数値計算を繰り返し行えば研究課題は解明できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
鬼界アカホヤ津波を発生させた要因として,カルデラ崩壊と火砕流流入の両方が考えられており,どちらが主要な要因であったかについては議論が続いている.今後は,火砕流流入の津波シミュレーションも行い,どちらの現象がより大きな津波を発生させるのかを検証する.そして,アカホヤ津波堆積物と火山噴出物の層序関係(火砕流や火山灰よりも先に到津波が到達したことを示している)を説明し得る噴火プロセスの中での津波の発生機構とタイミングを考察する. また,時間的に余裕があれば,熊本県天草市の沿岸湿地において津波堆積物調査を実施する予定である.五島列島では期待した成果が得られなかったが,九州地方西岸でデータが得られると数値計算結果と地質記録をより正確に照らし合わせることができる. 研究の成果は,国内外の学会(日本地球惑星科学連合2018年大会,AOGS 15th Annual Meeting,2018 AGU Fall Meetingなど)において公表し,国際誌に論文を投稿する予定である.
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