研究課題
本研究では,7300年前に東シナ海において発生した鬼界カルデラ噴火による津波の規模と噴火プロセスの中での津波発生要因を解明するため,2017年度までに大分県,徳島県,和歌山県の沿岸低地において得られているアカホヤ津波堆積物の情報を基にした津波数値シミュレーションを実施した.JAGURSという津波数値計算モデルを使用して,カルデラ崩壊と火砕流の流入によって発生する津波を仮定し,津波伝搬計算と上記沿岸低地における浸水計算を行った.先行研究に基づいて,カルデラ崩壊津波については崩壊にかかる時間を4パターン(30分,60分,90分,120分),火砕流流入津波については最大規模のものを1つ仮定した.いずれの条件を仮定したシミュレーションでも上記の地域に津波が到達することが分かったが,カルデラ崩壊津波の方が比較的規模が大きくなった.カルデラ崩壊津波では,最大で7.3 m(徳島県の沿岸低地,30分で崩壊)の津波が襲来する計算結果が得られ,大分県と和歌山県の沿岸低地においても3.9~4.3 mの最大波高が得られた.一方,3地域における火砕流流入津波の最大波高は,0.9~3.0 mであった.また,津波浸水計算から,大分県の堆積物コア掘削地点は30分と60分のカルデラ崩壊津波で,徳島県の堆積物コア掘削地点は30分のカルデラ崩壊津波でのみ,和歌山県の堆積物コア掘削地点は60分のカルデラ崩壊津波でのみ浸水することが明らかになった.ただし,本研究では現在の地形を使用して津波浸水計算を行っているため,7300年前のイベントを正確に表しているとは言えない.今後,当時の環境をきちんと考慮する必要はあるが,少なくともアカホヤ津波堆積物が見つかっている沿岸低地に津波を遡上させるためには,火砕流の流入のみでは不十分であり,30~60分程度の比較的速いスピードでカルデラ崩壊が起きる必要があることは明らかになった.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Sedimentology
巻: - ページ: -
10.1111/sed.12547
Progress in Earth and Planetary Science
巻: 6: 33 ページ: -
10.1186/s40645-019-0279-9
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