本研究は,これまでに地盤工学で確立されてきた力学構成モデルに,コロイド・界面化学や分子動力学で説明される粘土鉱物の結晶表面における化学作用を考慮することで,ベントナイト等の膨潤性粘土の力学挙動を合理的に記述する手法の開発を目的として,室内要素試験と数値シミュレーションから,力学・化学の相互作用として膨潤性粘土の挙動が評価できることを明らかにする. 2018年度は,間隙水の種類を変えることができる標準圧密試験機を作製し,飽和膨潤性粘土(ベントナイト)を対象として,一次元載荷状態において間隙溶液種類(イオン強度の変化)を置換する浸透圧密・膨潤試験を実施した.イオン強度の増加に伴う浸透圧密およびその減少に伴う浸透膨潤を確認し,浸透圧密有無による力学特性を検証した.なお,供試体高さを小さくすることで,透水性の低いベントナイト材料であっても,通常の力学的圧密ならびに浸透圧密・膨潤挙動の試験時間を短縮することができた. これらの浸透現象は,膨潤性粘土鉱物の結晶表面における電気化学的作用に起因しており,膨潤性粘土の力学挙動の本質である.2018年度には,これら表面化学現象を考慮した化学-力学連成構成モデルを提案し,上記実験結果との比較検証を行った.提案モデルは,膨潤性粘土の力学特性ならびに浸透圧密・膨潤を適切に評価できることを確認した.一方,浸透圧密後の力学挙動については,その圧縮性を過大評価することが示された.
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