研究課題/領域番号 |
17H06613
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大坪 正英 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80804103)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 地中空洞 / 個別要素法 / 模型実験 / アーチ機構 / 粒状体 / 粒子形状 |
研究実績の概要 |
平成29年度は模型実験と個別要素法数値解析を用いた研究を実施した。新たに製作した模型土槽を使用し、実寸法の1/10程度の模型地盤に対する土砂流出実験を実施した。ガラスビーズおよび珪砂で作成した地盤の底面中央部に設置したスリットを開口することで土砂流出を再現した。乾燥地盤に対する実験では土砂流出は止まることなく続き、地表面の全体的沈下が確認された。表層に不飽和地盤を有する場合は、アーチ機構が形成されることで地表面に大きな変状は確認されなかったが、再び飽和することで地表面の崩壊的な陥没に至った。 模型実験結果のさらなる解釈のために個別要素法数値解析を実施した。剛壁と周期境界を組み合わせた境界を設定し、壁面の影響が十分低下するように模型寸法を設定した。解析に使用した粒子数は100万粒を超え、膨大な解析ステップが必要であったが、Oakforest-PACSシステム上で並列解析を実施することで遂行した。球体粒子を用いた解析では地盤が密なほど土砂流出速度が低下したが、実験で得られたような空洞は形成されず、ガラスビーズ(乾燥)地盤と同様の挙動を示すことを確認した。非球体粒子を用いた解析を実施した結果、粒子間かみ合わせ(インターロッキング)の影響増大による流出性状の変化が確認され、流出が発生しない場合も確認された。流出が発生しない場合の粒子間接触力を可視化した結果、開口部上に形成されたアーチ機構が流出を抑制したことが明らかとなった。しかし、珪砂(乾燥)地盤を用いた実験同様に,地中空洞が保持された状態で安定することはなかった。また、地中空洞を有する地盤の弾性波伝播特性の基礎的な研究として、同地盤材料に対する弾性波伝播実験(要素試験)および同様の個別要素法解析を実施した。弾性波伝播速度および周波数特性に着目して研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を遂行する中で、土砂流出性状は粒子形状に大きく依存することが明らかとなった。当初の計画では粒子形状の影響を数値解析で検討する予定はなかったが、その重要さから判断し、様々な粒子形状を取り入れた解析を実施中である。また、乾燥状態および完全飽和状態にある地盤では生成した地中空洞が保持されず地表面の崩壊に至ることが確認された。実際の陥没現象の解明を追求するために、不飽和の影響、すなわち粒子間の表面張力を取り入れた数値解析を新たに実施する。これらを受け、当初の研究計画より少し遅れるが、研究完成後に得られる知見は当初予測できたものよりも有益であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き模型実験および数値解析を実施し、乾燥、完全飽和、不飽和状態における空洞成長の様子を評価する。地表に舗装がある場合を想定し、表層をセメント改良した地盤における空洞成長および陥没の発生傾向を考察する。空洞周辺地盤の振動特性を明らかにするために空洞を有する地盤において弾性波伝播試験を実施する。特に数値解析では、土粒子形状の影響の評価、および表面張力による粒子間付着力を取り入れた解析を新たに実施する。数値流体解析との連成解析を実施し、豪雨等の影響が空洞成長に及ぼす影響を定量的に評価する。 模型実験および数値解析で得られた知見を統合し、地中空洞が地表面陥没に至るリスクを評価する。陥没リスクの高い地盤材料および地盤条件を明確にし、土粒子レベルの挙動と地盤全体の挙動を関連付けることで学術的かつ実務的な研究成果の整理を試みる。
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