研究課題/領域番号 |
17H06626
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 龍一 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (60800505)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 組織特異性 / 自己免疫疾患 / TCRレパトア / 樹状細胞サブセット |
研究実績の概要 |
我々はヒト自己免疫疾患IPEX症候群患者にみられるFoxp3変異をマウスに導入し解析することで、この変異が制御性T細胞(Treg)の機能と自己免疫寛容に与える影響を解析してきた。結果、Foxp3の384番目のアラニンがスレオニンに置換しているFoxp3A384Tマウスでは、皮膚や肺選択的に自己免疫疾患が発症すること、これらの組織選択的にTregが減少していることを明らかにしてきた(Hayatsu et al., Immunity, 2017)。 本研究では、このFoxp3A384Tマウスに生じる組織特異的な自己免疫疾患発症/増悪が組織選択的な炎症抑制に関わるTregのT細胞受容体(TCR)レパトアの欠損とそれに伴う組織特異的な炎症惹起に関わる通常型T細胞(Tconv)のTCRレパトア増加によるのではないかと仮説をたて、本モデルを用いてその仮説を検証することとした。TCRレパトア解析を行う際に、1細胞=1TCRを保証するため、Foxp3A384Tマウスと遺伝子再構成を受けた1つのTCRbeta鎖と片方のアリル由来のTCRalpha鎖を発現 する1D2b x TCRa+/-マウスを掛け合わせた。 本年度は本マウスの解析を重点的に行い、本マウスにおいても通常のFoxp3A384Tマウスと同様に皮膚や肺で顕著な炎症がみられ、肝臓では炎症がマイルドであることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作製したFoxp3A384T x 1D2b x TCRa+/-マウスの繁殖遅れにより、本マウスの表現型解析に時間を要した。そのため、表現型解析後に行う予定であった組織のTreg、TconvのTCRレパトア解析に遅れが生じた。 一方、本年度の研究で、Foxp3A384T x 1D2b x TCRa+/-マウスにおいてもFoxp3A384Tマウス同様に組織特異的なTreg減少と炎症発症が生じることが示され、次年度に組織のTreg、TconvのTCRレパトア解析を行う意義があることが確認された。 このことから本研究方針には問題がなく、今後TCRレパトア解析を行うことで組織選択的な炎症発症と組織選択的なTregのTCRレパトアの欠損の関係性を明らかにしていけると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
解析の完了していないFoxp3A384T x 1D2b x TCRa+/-マウスの組織の炎症評価を完了する。そして、炎症の生じる組織、炎症の生じない組織のTreg、Tconvを単離し、それらのTCRalpha鎖を増幅して、次世代シークエンサーで配列を解析する。その結果を用いて、Foxp3A384Tマウスで炎症の生じる組織では野生型マウスと比べTregのTCRレパトアの減少が大きく、炎症の生じない組織ではTregのTCRレパトアの減少がほとんどないかを検証することで、組織特異的な自己免疫疾患発症とTregのTCRレパトア減少の関係を明らかにする。
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