本研究で高分子ナノミセルが腫瘍血管から腫瘍組織へ一過性に噴出する動的透過経路であるNano eruptionという現象を制御することで腫瘍組織深部へ薬剤を送達するドラッグデリバリーシステムを目指して、促進する条件と抑制の条件を検討した。 その結果、抗マラリア薬であるクロロキンはTumor vessel normalizationに関与することが明らかになっていたが、クロロキンの併用によって、Nano eruptionの発生回数に変化は認めなかったが、噴出面積や増大速度、噴出持続時間の有意な増加が観察された。ナノミセルのサイズを変えても同様の結果を示し、クロロキンによるTumor vessel normalizationによって血管の駆出力が増加しNano eruptionの効果が促進したと考えられる。 その他、COX-2阻害薬のセレコキシブはナノミセルと併用することで腫瘍の肝転移抑制効果がこれまで報告されているが、セレコキシブの併用ではNano eruptionの発生回数や噴出面積や噴出持続時間に有意な変化を認めなかった。 本年度の研究で併用する薬剤によってNano eruptionの発生に変化がみられるかどうか異なることが明らかになった。
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