老齢マウス(24か月齢)ではChromogranin A陽性腸管内分泌細胞数が若齢のマウス(3-6か月齢)と比べて増加した。SIRT1が腸管上皮の加齢性変化に役割をもつことが考えられることから、腸管上皮特異的SIRT1KOマウスに高脂肪食を負荷し、ブドウ糖負荷後の血中活性型GLP-1濃度を測定すると、SIRT1KOマウスではコントロールに比べて2倍程度にまで上昇していた。SIRT1ノックアウトマウスの腸組織でChromogranin A抗体およびGLP-1抗体による免疫染色をそれぞれ行うと、絨毛あたりのChromogranin A陽性細胞数とGLP-1陽性細胞の数がそれぞれ上昇していることが確かめられた。 腸管上皮特異的SIRT1マウスに高脂肪食を負荷して、OGTT、ITTを施行すると、コントロールと比べ耐糖能およびインスリン抵抗性の改善を認める。普通食を摂取した場合でも、GLP-1受容体アンタゴニストExendin9-39による処理後、OGTT、ITTを行うと、SIRT1KOマウスでの耐糖能およびインスリン抵抗性の改善や体重減少の効果を抑制した。 SIRT1阻害効果のあるニコチンアミドで処理した不死化内分泌細胞株GLUTag細胞およびSTC-1細胞を解析すると、Neurogenin3およびプログルカゴンmRNAが特異的に上昇しており、SIRT1欠失によるタンパク脱アセチル化が腸管内分泌細胞制御に重要な役割を持つことを示唆する。SIRT1活性の低下は、Neurogenin3とプログルカゴンmRNA を上昇させて、腸管内分泌L細胞数を増加させるものと考えられる。Neurogenin3がSIRT1のターゲットのひとつであると想定され、今後、その制御メカニズムを明らかにしていく。
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