研究課題/領域番号 |
17H06645
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土井 麻里 (阿部麻里) 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (50802386)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / 血管外漏出 / 硬結 / 超音波 / エラストグラフィ |
研究実績の概要 |
本研究は抗がん剤の血管外漏出によって生じる硬結の評価方法の確立及び、硬結発症率の調査、さらに硬結形成の要因探索を行うことを目的とする。 抗がん剤の血管外漏出は、潰瘍や壊死に至らないまでも血管及び、その周囲組織に変性をもたらし、硬結を生じることがある。一旦硬結が生じてしまうと、その血管を末梢静脈カテーテルの留置対象から除外し、硬結が消失するまで、留置に適していない血管にカテーテルを留置せざるを得ない。結果としてカテーテルの留置困難や、点滴中のトラブルが生じやすく、治療継続が困難になることが臨床的課題である。したがって、硬結が予防できることが望ましいが、硬結の大きさ、硬さの程度を評価する客観的な方法がないため、その発症率さえも不明である。そこで、超音波エラストグラフィを皮膚の表在組織に使用し、硬結の大きさ、硬さの描出手法の確立を行い、その発症率を調査するとともに、硬結形成の要因探索を行う。 大学病院の外来化学療法室で94名の患者より同意を得て、調査を開始した。結果、69名の患者から、前回抗がん剤を投与した部位の超音波検査(Bモード、エラストグラフィ画像の取得)と従来の観察法(視診、触診)によるデータ収集を次回の外来時に行うことができた。薬剤投与中に明らかな血管外漏出を起こしたものはいなかった。しかし、次回外来時、看護師が硬結が生じていると判断した患者が13名いた。硬結が生じたもののうち1名以外はすべて女性であった。カルテから、患者属性、治療や血液データなどの情報も収集した。その結果、性別、乳がん、転移、などが硬結発症の有無と有意に差があることが明らかになった。今後さらなる解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している理由としては、当初の計画通り、超音波検査士からエラストグラフィを用いての硬結の描出手法のトレーニングが予定通り完了したこと、調査部署である大学病院の外来化学療法室スタッフの全面的な協力が得られたことが大きいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.調査データの分析 昨年度、超音波エラストグラフィを用いて、大学病院附外来化学療法室で抗がん剤治療を受けた69名分のデータを得た。また臨床看護師がどのように硬結を触診でアセスメントしているかを質問紙を用いて調査した。それらのデータを分析する 2.論文執筆 (1)明らかな抗がん剤の血管外漏出を起こした後に硬結となった部位をBモード及び、エラストグラフィで観察できたケース:超音波検査士に画像の見方を指導を受けつつ執筆中 (2)硬結の実態とその要因分析:上記1で得られるデータをもとに、論文を執筆する (3)超音波を用いた抗がん剤投与後に生じた硬結の経時的変化の観察:毎週硬結部位を超音波で観察した。6週間経過後に触診では触れなくなった硬結部位を観察したデータをもとに執筆予定
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