研究実績の概要 |
[背景・目的]点滴治療後に発生する硬結部位は末梢静脈カテーテル挿入を避けられるため、繰り返しの治療が必要な抗がん剤投与中の患者にとって硬結は大きな問題であり、予防が必要である。しかし、確立された評価方法もなく、発生率や、実態も不明である。そこで、超音波診断装置(エコー)を用いて、実態調査をし、評価方法の確立を目指した。
[結果・考察]都内大学病院の化学療法室で69名を対象に調査を行った結果、明らかな血管外漏出は1例もなかったが、次回治療日に17.4%に硬結が観察された。治療完遂後に生じた硬結と硬結のないケースにおいて皮下組織の硬さに統計的有意差はなかった。リスク要因は、年齢(OR,0.92;95%CI,0.86‐0.98)と小さな血管径(OR,0.40;95%CI,0.16-0.98)であった。硬結と判定した看護師は全員が、その部位は穿刺対象から外れると答えた。しかし、硬結の有無に関係なく、皮下浮腫、血栓、血管壁の異常がみられるケースがあった。一方、硬結と判断されても疼痛も皮下組織の異常もないケースもあった。エコーを用いてカテーテル留置部位をアセスメントする有用性が示唆された。
[研究の意義]抗がん剤投与後に生じる硬結を初めて超音波診断装置(エコー)を用いて形態、硬さを観察した研究である。硬結の有無に関係なく、皮下組織に異常(浮腫,血栓,血管壁の肥厚)の観察されたケースがあった。また一方で、硬結と判定されても痛みも皮下組織異常もなく、更に血管径も十分に大きく、カテーテル留置に適していると考えられるケースがあったことから、エコーを用いることで、硬結によりカテーテル留置の選択肢から外されてきた部位もカテーテル挿入の対象になりうる可能性があり、これまで硬結があるがゆえに、関節近傍や、手背などカテーテル留置に不適とされている部位に留置せざるを得なかったケースを減らせる可能性がある。
|