周産期に高脂肪食を摂餌した母マウスの産仔(過栄養群)、あるいは摂餌制限を行った母マウスの産仔(低栄養群)の肝臓を乳仔期(16日齢)に採取し、次世代シークエンサーを用いたRRBS(Reduced Representation Bisulfite Sequencing)法によりDNAメチル化変化を、またDNAマイクロアレイ法により遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、過栄養群でDNAメチル化が低下し、かつ発現増加した遺伝子群は、脂質合成に関連する遺伝子群が多く抽出され、それらは転写開始点近傍の領域を中心にDNA脱メチル化変化を生じていた。代表的な遺伝子についてはバイサルファイトシークエンス法を用いてその脱メチル化変化を確認した。過栄養群は、乳仔期において対照群と比較して肝重量が増加しインスリン抵抗性が増加すること、また成獣期(14週齢)において対照群と比較して血清総コレステロールや肝臓における脂肪含有量が増加することを確認した。肝臓の5ヒドロキシメチル化シトシン(5hmC)の定量解析を行い、乳仔期において最もTET(Ten-eleven translocation)によるDNA脱メチル化反応が生じていることが判明した。過栄養の母体から供給される乳汁の脂肪酸組成をガスクロマトグラフ質量分析計を用いて解析し、ステアリン酸、オレイン酸、αリノレン酸の含有量が過栄養群で増加していることを確認した。さらに低栄養群でDNAメチル化が亢進し、かつ発現低下した遺伝子群においても、脂質合成に関連する遺伝子群が多く抽出された。以上から、異なる母体栄養環境が乳仔肝にDNAメチル化変化を生じて糖脂質代謝遺伝子発現を制御し、将来の脂肪肝形成に寄与している ことが示唆された。
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