研究課題/領域番号 |
17H06654
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
日比谷 秀爾 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (20801963)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | IBD付随がん / 発がん体外モデル / ヒト大腸オルガノイド / 上皮細胞機能不全 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎(UC)は長期の持続炎症により癌化を引き起こし患者の予後に密接に関わる。UC患者では罹患期間30年で25%の患者がIBD付随がんを発症するという報告もあり、発がん率として非常に高率である。さらに本邦ではIBD患者数が急増していること、内科的治療の発達により大腸を温存したまま長期罹患する患者が多いことから将来的にIBD付随がん患者の急増が危惧されており、早急な発癌・抗癌機構の解明が望まれている。IBD付随がんの問題点としては、進展様式が平坦型・易浸潤性のため早期発見が困難なこと、進行癌に対する化学療法が無効なことが多いため散発性大腸がんよりも予後が悪いことが挙げられる。その病型からも散発性大腸がんとは独立した病態が考えられることから、散発性大腸がんに対する研究・臨床の病態機構を応用することが出来ず、IBD付随がんに特化した病態解明・治療薬開発が必要な状況であるが、その発症メカニズム・悪性形質獲得機構は未だ不明である。そこで本研究では申請者が独自に開発したIBD体外モデルを発展させ、ヒトIBD患者由来の大腸オルガノイドを用いたIBD付随大腸発がん体外モデルを構築することにより、IBD罹患中の発がん過程を明らかとすると共に、特徴的ながん形質獲得機構を解明する。さらに、臨床応用として発がんリスク評価・発がん予防策の構築・新規治療薬開発などの基盤を形成することを目的とする。本研究で得られる成果により最終的にはIBD患者での個々の腸管細胞に対し「過剰炎症応答度」「炎症蓄積度」「発がん危険度」を評価することで発癌予測を可能にし、「細胞オーダーメイド治療」の開発を行うという新たな理論基盤を創出する可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト大腸オルガノイドを樹立した。人工的な慢性炎症刺激を行い、上皮細胞の炎症応答を確認した。さらに、網羅的遺伝子発現解析により、炎症刺激オルガノイドと潰瘍性大腸炎患者生検検体との遺伝子プロファイルに類似性を確認し、炎症性腸疾患を模倣した体外モデルであることが示唆された。また、CRISPR/CAS9システムにより、ヒト大腸オルガノイドのP53変異を導入した。炎症刺激耐性を獲得するなど、炎症発がん経過を再現していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度確立したIBDモデル、IBD発がん過程モデルを詳細に解析することで、炎症刺激耐性獲得機能や不死化機構を解明する。さらに、本モデルを発展させ、IBD付随癌が人工的に作成されるか検討を行う予定である。
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