研究代表者らは、これまでに確立してきたヒトinduced pluripotent stem cells (iPS細胞)の肝前駆細胞誘導・肝細胞成熟化誘導および肝炎ウイルス感染機構研究の学術・技術基盤を元に、(1)ヒトiPS細胞由来肝細胞系譜細胞を利用したB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化の分子機構の解明、及びHBV-宿主相互作用における自然免疫応答の解析を行った。 さらに、(2) Cytochrome P450 (CYP)発現が生体肝細胞に近いiPS由来肝細胞系譜細胞を利用して、スタチン系新規抗HBV薬候補薬における抗HBV機構の解析、及び宿主間でのCYP発現差異による影響を解析する研究を遂行し、以下の実績を得た。 まず、従来プロトコールに技術的改良を加えた誘導法を用いてmodified-iPS-Hepsを誘導した結果、代謝酵素活性、肝細胞成熟化マーカー発現、HBV及びHCVの生活環に関する宿主因子発現の全てでこれまでのiPS-Hepsに比べて改善していた。この細胞を用いて、HBVとHCV共感染培養系を確立した。本培養系では、培養上清中のHCVコア抗原、細胞内HCV-RNA発現は、HCV単独感染に比して有意に高かった。逆にHBV関連蛋白・RNAの発現はHBV単独感染に比して有意に低かった。 共感染培養モデルを用いて、SofosbuvirによるHCV排除時のウイルス動態を検討し、HBV-HCV共感染時のHBV活性化を示唆する現象がin vitroで確認し、本成果について米国肝臓病学会の年次総会で口演発表を行った。 また、数種のスタチン系製剤の抗HBV作用に関してスクリーニングを行い、特にSimvastatinは濃度依存性に細胞内HBV-DNA発現の低下がみられ、Heme oxygenase-1が効果に関与する可能性が示された。
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