研究課題
本研究の目的は、我々が既に構築した次世代シークエンサーによる網羅的腎臓病遺伝子診断パネルを用いて遺伝性腎疾患と診断された患者の遺伝子診断を行い、既知の原因遺伝子に疾患責任変異が同定されなかった症例を集積し、全エクソンシークエンスなどのより広範な遺伝子スクリーニングを実施し、新規原因発見を目指すことである。さらに膨大なシークエンスデータと臨床情報をデータベース化することにより、表現形と遺伝子型相関関係の解明を目指し、変異情報を治療法選択や予後予測に結びつけることを目指している。1 遺伝性腎疾患における新たな原因遺伝子の発見2017年度でパネル診断を実施した症例数は200例に及び、パネル運用を開始した2014年からの累積は530件に至る。このうち、塩喪失性腎症の一つであるGitelman症候群の遺伝子解析は53例に至り、既知の責任遺伝子に変異を認めない例は29例であった。また、腎性低尿酸血症の未解決家系は4例認めた。他にも、家族性腎不全、腎性尿崩症などの未解決家系を順次蓄積しており、順次全エクソンシークエンスを実施する準備を整えている。また、遺伝性塩喪失疾患については既にこれまでのデータから複数の新規有望候補遺伝子を同定しており、海外研究協力機関からそのノックアウトマウスも譲渡され、既に交配を開始している。In vitroの実験を含めて、引き続きこれら有望遺伝子の検証作業を継続する。2 網羅的遺伝子解析データベースの構築による表現系-遺伝子型相関関係の解明累積530名分の遺伝子変異データは、解析サーバー内に蓄積されている。これらの変異情報と臨床症状との相関関係を検討すべく、引き続きデータベースの構築を継続する。具体的には疾患ごとに各疾患の有するメジャーな症状、代表的検査値、投薬内容、治療予後等の要素を個人情報を切り離した状態で登録しておき、随時検証する準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
全国から集積した網羅的遺伝子診断の受付数は、当初の想定通りH29年度は年間ほぼ200件程度であった。全エクソン解析を実施するための未解決症例も順次蓄積されており、順調に進展していると言える。本年度は予定通り、集積したサンプルの全エクソン解析を実施する予定である。なお症例の蓄積に伴い、データベースへの登録数も順調に増加している。遺伝型-表現系相関を見出すべく引き続き解析を実施する予定である。
塩喪失性腎症において既知の責任遺伝子に変異が同定されなかった家系において、新たに二つの有望候補遺伝子を得た。一方はノックアウトマウスを持つ国外研究室との研究協力のもとにマウス譲渡手続きが完了し、既に交配を開始した段階である。表現系解析により、新規責任遺伝子としての可能性を引き続き追求する。また他方の有望候補については培養細胞においてCRISPR/Cas9システムを用いたノックアウトセルラインの確立を既に完了しており、続いて変異体発現解析を行っていく予定である。遺伝子解析サンプル集積については既に関係学会の協力、学会研究会発表並びに当科ホームページによる広報活動を継続し、引き続きサンプル集積を目指す。現在までのところ研究計画を遂行する上での人員やハードウェア面での大きなトラブルはなく、引き続き研究計画を遂行する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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