研究課題/領域番号 |
17H06672
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
深山 絵実梨 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 助手 (10801144)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 東南アジア / 考古学 / 初期国家 / ガラスビーズ / 林邑 / チャンパ / 扶南 / オケオ |
研究実績の概要 |
平成29年度は主に、日本における文献精査を中心に研究を進めた。また、現地調査では、当初予定していたベトナム中部のチャンパの王城チャーキュウ遺跡ではなく、ベトナム南部にチャンパと同時期に存在した国家である扶南の港市遺跡出土ガラスビーズに関する調査をおこなった。扶南は現在のベトナム南部からカンボジアの一部にかけて存在した国家で、すでに装身具研究が一定程度進展しており、チャンパの装身具研究、とくにガラスビーズの生産と流通の様相を明らかにする上で不可欠な比較対象である。資料調査では、ベトナム歴史博物館(ホーチミン)、ホーチミン市歴史博物館およびアンザン省博物館にて資料の見学をおこなった。ベトナム歴史博物館では調査実施時に、扶南の装身具に関する企画展が開催されており、扶南における装身具文化の全体像を実物を見ながら把握することができた。 また、現在発掘調査が実施されているアンザン省オケオ遺跡群を中心とした遺跡踏査を実施し、周辺の地理環境や遺跡の立地について認識を深めることができた。アンザン省博物館では、オケオ遺跡出土品やダーノイ遺跡出土ガラスビーズを実見することができた。とくに、扶南の埋葬遺跡であるダーノイ遺跡では大量のインドパシフィックビーズが副葬品として出土している。これらの出土ビーズについて、一点一点、色調を元にその成分を推定し、ドキュメンテーションをおこなった。調査遺物総点数は4000点を超える。こうした資料は、ベトナム国外への持ち出しは当然のごとく制限されており、実際の化学分析をおこなうには各種手続きを推進する必要がある。今後は、こうした手続きを進め、理化学分析も実施する予定である。 以上のように、2017年度は扶南におけるガラスビーズの様相を整理・確認するとともに、その組成を概観することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は当初の予定を変更して、チャンパ(林邑)の装身具研究での比較対象となる扶南の考古遺物に関する調査を先んじて実施した。理由として、現在扶南の港市であるオケオ遺跡周辺(ベトナム南部アンザン省)でベトナム研究機関による大規模な発掘調査がおこなわれており、現場の見学や最新の成果に関する情報を収集するとともに、分析サンプルを選定・採取するためである。そのため、チャーキュウ遺跡とその出土品に関する調査自体は当初の計画よりも進展が遅れているものの、研究計画全体を通してみれば概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、ベトナム中部クアンナム省のチャーキュウ都城遺跡のビーズ等出土地点で出土・採集した考古資料の化学分析等を実施する計画である。これによって、チャンパ(林邑)における装身具のうち、ガラスビーズやガラス製品の様相を検討する。現状ではチャーキュウ遺跡において小規模な発掘を実施する予定である。ビーズ確認地点は個人宅の敷地内であるため、発掘に際しては地権者との交渉と合意が必要である。仮に合意が得られず発掘調査の実施が困難になった場合、これまでに得られている、チャーキュウ遺跡採集のガラスビーズコレクション資料を対象として化学組成分析を遂行する予定である。 また、引き続き、オケオ文化のガラス装身具の分析を実施し、チャンパとの比較対象資料を拡充していく。
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