平成30年度は、前年度1月に選定したオケオ遺跡出土ガラスビーズの分析サンプルを日本へ輸送するとともに、これらの理化学的分析を研究協力者を中心としておこなった。 また、夏季現地調査では本研究の主たる対象であるベトナム中部クアンナム省のチャーキュウ遺跡を踏査するとともに、博物館において資料調査とサンプリングを実施した。踏査では、当初発掘を予定していたチャーキュウ遺跡のビーズ発見地点で、すでに文化層が撹乱され、発掘は困難であることが判明した。そのため、周辺住民にさらなる聞き取り調査を実施し、将来的に発掘可能な地点について検討した。資料調査を実施したズイセン県サーフィン=チャンパ博物館では、初期国家形成期であるチャーキュウ遺跡、ゴーカム遺跡と、それ以前の鉄器時代にあたるゴーマヴォイ遺跡、ゴーズア遺跡出土・採集のガラスビーズ、ガラス塊から分析サンプルを選定し、許可を得て日本へ輸送した。また、現地協力者から、ベトナム南部ゾンカーヴォ遺跡出土のガラスビーズの分析サンプルを提供していただくことができた。 これにより、ベトナム中部および南部の鉄器時代から初期国家形成期にかけてのガラスビーズ資料を体系的に収集することができた。サンプルとした遺物の出土した遺跡の年代、ガラスの化学組成の分析を通して、ベトナム中部および南部の鉄器時代と初期国家形成期では、ガラスビーズと関連するガラス遺物にどのような差異があるのか検討した。
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