本研究の目的は次世代蓄電池として期待されている全固体Li電池の実用化の課題として高出力化が挙げられる。その鍵は電極/電解質間界面抵抗の低減にある。そこで本研究は全固体Li電池の高出力化に向けた界面抵抗低減指針を得るべく、薄膜を利用した理想モデル電極を作製し界面抵抗起源を解明することを目的としている。実用研究に成果を還元するために、実用材料活物質に着目しそれらの薄膜電池作製に取り組んでいる。理想モデル電極を利用して界面抵抗を定量評価するためには高品質な電極薄膜が必要である。そこで本年は実用材料正極活物質の高品質薄膜合成に主に取り組んだ。パルスレーザー堆積法による正極材料の薄膜作製条件最適化を行い、結晶性、構造、組成、電子状態、表面平坦性、等を評価することで結晶配向制御された原子レベルで平坦な高品質エピタキシャル薄膜合成を達成している。固体電解質としてLi3PO4薄膜を利用し、対極にLi薄膜を蒸着することで電池素子を形成した。高品質薄膜を利用した電池素子作製及び評価まで全真空プロセスによる清浄な界面を維持することが可能な装置を活用し、電池特性、及び界面抵抗を評価した。電池特性の評価から作製した電池素子の界面抵抗はおよそ20 Ohm・cm2 程度が得られ、従来の有機溶媒系電解質を用いたLiイオン電池の界面抵抗よりも低く、かつ全固体Li電池の中では我々のみが達成している世界最小レベルの界面抵抗を達成している。このように実用材料活物質らに対して超低抵抗界面モデル電極形成に成功したことから、電極/固体電解質界面に様々なナノ緩衝層を導入して界面抵抗変化を定量的に評価することが可能となる。よって界面抵抗低減に向けた新たなモデルナノ界面構造構築する基礎となる成果が得られた。
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