研究課題/領域番号 |
17H06677
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大井 梓 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (00803876)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 白金合金ナノ粒子触媒 / 触媒耐久性 / チャンネルフローマルチ電極法 / パルスめっき |
研究実績の概要 |
申請者は,固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード触媒に使用される白金(Pt)使用量を低減するために,Pt合金触媒の開発を目指している.Pt合金触媒は,PEFCの起動・停止のような高負荷環境においては,Ptおよび合金添加元素(M)の双方の溶解により,触媒劣化が進行することが懸念される.そこで本研究では,Pt合金の溶解機構解明を行い,Pt合金を高耐久化するための指針を検討している. 本年度はPt合金の溶解機構を解明するために,チャンネルフローマルチ電極法という特殊な電気化学測定システムを構築し,PtとCuの溶解を同時にかつその場検出可能なことを示した.その検出定量性の向上や,Cu以外の添加元素候補であるCo,Niの本システムにおける検出可能性の有無について,現在取り組んでいるところである. また,Pt-Cu合金ナノ粒子を作製するために,パルスめっき法の条件決定を行った.めっき浴濃度の最適化を行い,2種類の組成のPt-Cu合金ナノ粒子が作製可能になり,パルス回数を制御することでナノ粒子の粒径を制御できることを明らかにした.これら作製した粒子に対してPEFCの起動・停止負荷を与えて,誘導結合プラズマ質量分析計を用いて負荷付与中に溶解したPtおよびCuの定量,および負荷付与前後でナノ粒子の走査型電子顕微鏡による同一場所観察を行い,ナノ粒子の溶解機構のモデルを確立しその妥当性を検討しているところである. これまでの結果から,PtおよびCuの双方の溶解によるナノ粒子面積の減少が触媒劣化の主要要因と考えられるが,これらを抑制するための組成制御や表面処理方法について詳細な検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,溶解機構を検討するうえで重要な手法であるチャンネルフローマルチ電極法(CFME)の構築と,Pt-Cu合金ナノ粒子の作製に取り組んだ.CFMEによりPtおよびCuのその場検出が可能となったため,Pt-Cu合金溶解機構の詳細を検討することが可能になった.また本年度は,Pt-Cu合金ナノ粒子の作製は2種類の組成にとどまったが,組成を変化させるための条件出しはほぼ終了しており,来年度はさらに異なる組成についても検討を開始できるものと考えている.以上から,当初の計画に沿っておおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,これまでに開発したチャンネルフローマルチ電極法を改良し,Pt合金から溶解した元素の定量性向上に努めて,より詳細なPt合金の溶解機構解明を目指す.また,Pt合金の溶解機構に及ぼす(1)組成の影響,(2)添加元素の影響,(3)粒径の影響について整理を行い,Pt合金の高耐久化原理を検討する.
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