研究実績の概要 |
「液泡は細胞周期の進行に必須である」ことは明らかになったが (Jin and Weisman, 2015)、その分子的詳細は未だ不明である。申請者はすでに変異体スクリーニング及び次世代シークエンサーを用い、液胞を介した細胞周期制御に関わる因子としてBUR1遺伝子を同定している。 本研究申請書には以下の研究を計画していた。本研究期間内(平成29-30年度)に、1)BUR1遺伝子の機能解析から、液胞からのシグナルがどのように細胞周期制御に至るのかについて詳細を明らかにする。さらに生化学的な観点から、2)質量分析を用いた液胞構成因子の網羅的解析により、細胞周期進行に関わる液胞構成因子候補の選定及び、その因子の細胞周期進行における役割の解明を目指す。また、上記の研究と並行して、さらなる変異体スクリーニング及び次世代シークエンサーによる解析を用い、3)オルガネラチェックポイントの分子実体(遺伝子)の同定を目指す。 申請者は2017年4月より現職にあり、1年ほど経過した現時点(4月)で、1)Bur1キナーゼによるAGCキナーゼ Sch9のリン酸化部位も質量分析器により複数同定を行った。2)変異体スクリーニングによりオルガネラチェックポイント制御に関わる可能性のある候補遺伝子を、次世代シークエンスを用い複数同定を行った(米国ミシガン大学Lois Weisman、Tom Wilson博士らとの共同研究)。現在、候補遺伝子を解析を進めている。3)野生型酵母の液胞と、pep12変異体から液胞を単離し、液胞構成因子を質量分析器を用いることで、野生型酵母の液胞と、pep12変異体の液胞の存在比に五倍以上の差が認められるタンパク質を数十同定した。候補タンパク質の中に、細胞周期制御に必要な因子の存在が期待される。
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