女性の働き方に対して中立でない日本の配偶者控除制度は、しばしば専業主婦世帯を優遇するもの、自民党の保守的な性別役割分業意識に根差したものとして理解されてきた。これに対して本研究は、この制度が、自民党による利益分配のもとで受益者を変えながら拡充されてきたこと、女性の働き方に中立的な税制に移行したスウェーデンの事例とは政権党のアイデアだけでなく支持構造が異なることなどを明らかにし、この制度の改廃をめぐる議論に貢献しうるものである。また制度論において、制度が常に特定の社会集団・価値観と結びついているとは限らず、変化してこそ存続する可能性を示唆するものである。
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