研究課題/領域番号 |
17H06685
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
高田 実宗 一橋大学, 大学院法学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (50805794)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 計画行政法 / 道路交通法 / 道路法 / 環境法 / 都市法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現代的な交通政策を支える法的枠組みについて、計画行政法の見地から、提言を行うことであった。すなわち、昨今、交通工学などの分野では、「コンパクトシティ」が合言葉となり、自動車交通を抑制するとともに、マイカーから公共交通機関や自転車といった交通手段への転換を促す施策が試行錯誤されており、その基盤を法的側面から構築していくことが本研究の狙いであった。そして、円滑な移動、交通安全、環境保護、まちづくり、こうした諸利益を踏まえた統合的な交通政策の実現が喫緊の課題であるという認識の下、1.交通利用者の権利、2.沿道住民の環境利益、3.中心市街地の活性化、に着目しつつ、法的な考察を進めてきた。なお、上記の課題は、道路交通法や道路法といった、いわゆる交通法制のみにとどまらず、環境法や都市法も密接に絡む状況にある。そこで、本研究では、ある特定の法分野のみを対象とするのではなく、関係する各法領域を横断的に分析しているところである。 平成29年度においては、上記の研究目的を踏まえ、とりわけ、EVシフトという直近の情勢から示唆を得て、計画行政法の枠組みにおいて、電気自動車の普及促進策を語ることに力を注いだ。すなわち、ドイツでは、電気自動車の利用に対して優遇措置を講じ、これによって電気自動車の普及を促そうとする法律 が2015年に成立しており、この新法を素材として、交通法制における秩序法から計画法への流れを明らかにした。さらに、平成29年度においては、国際基督教大学で開催されたシンポジウムに参加し、自動運転に係る法的責任論について意見交換をし、その最新の情勢について知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画によれば、平成29年度は、文献収集に力を入れることとなっており、その目的は着実に達成できたと考えられる。とりわけ、ドイツに渡って実施した文献調査の成果は顕著であり、現地においては、EVシフトに係る情勢を踏まえた最新の資料に触れることができた。そして、それにより得た知見を盛り込んだ論考を執筆し、これは、「電気自動車の普及促進策と法的課題」という論題において、平成30年7月に刊行される『一橋法学』17巻2号(山田洋先生退官記念論文集)への掲載が予定されている。 もっとも、当初の計画においては、環境保護という側面から、徐々に、まちづくりという側面へと、研究の重点を移す予定であったが、環境保護の見地から交通法制を論ずる豊富な資料に出会い、そちらの分析に時間を費やしたため、なかなか中心市街地の活性化という観点については、力を注ぐことができなかった。しかしながら、まちづくりに係る研究が手薄になったとはいえ、その一方、環境改善を目的とした交通法制について、より深い考察を図ることができたと思われる。よって、本研究は、全般的に、おおむね順調に進展していると評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
交通政策を支える法的枠組みは、現在進行形で議論の対象となっている。ドイツでは、フォルクスワーゲンによる一連の排ガス不正事件が契機となり、地球温暖化対策および大気汚染対策の視点から、交通政策をめぐる動きが激しい。たとえば、連邦行政裁判所が2018年2月に下した判決は、旧式ディーゼル車の走行禁止を認めており、それが今後の交通政策に与える影響は注目に値しよう。そこで、こうした最新の動きも視野に入れるため、平成30年度も、ドイツへ渡った調査活動の実施を目玉として、引き続き、資料収集を継続していきたい。また、当初の計画によれば、中心市街地の活性化という視点からも、交通法制を考察する予定であったので、その分析に力点を移していく所存である。平成30年度は、本研究の最終年度であるため、資料取集および読解作業に加え、本研究の成果として、複数の論文を執筆・公表していきたいと考えている。
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