研究課題/領域番号 |
17H06686
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
谷口 諒 一橋大学, 大学院商学研究科, 特任助教 (90801283)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 経営学 / プロセス研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、組織目標の異なる複数の組織が参画するプロジェクト(組織横断型プロジェクト)の成立過程がその実施過程に及ぼす影響を、プロジェクトの正当性という観点から考察することにある。組織横断型プロジェクトは、利害の異なる組織が関与するという点に加え、それゆえ大規模なプロジェクトになるという点に特徴がある。それらの点に本研究の主眼が置かれている。 平成29年度は、既存研究のレビュー及びインタビュー調査、学会報告を実施した。レビュー作業は、大型プロジェクト及び正当性に関する研究を対象に行った。前者の研究群のレビューからは、プロジェクトのタイプや地域、時代に関わらず、大型プロジェクトのコスト試算は必要以上に高くなるメカニズムが存在するという点が明らかになった。一方で後者の既存研究としては、多様なステークホルダーからの正当性の獲得を議論する近年の企業家研究を対象とした。そのレビューからは、プロジェクトの特性をいかに意味づけるかが、多様なステークホルダーから正当性を得る上で重要であることが明らかになった。これらの研究群のレビューをさらに進めており、それらの知見を統合したレビュー論文の執筆を行う予定である。 インタビュー調査は、本研究が事例として取り上げる「バイオマス・ニッポン総合戦略」のもとで進められた、バイオマスタウン事業に参加した自治体を対象として行った。その調査からは、プロジェクトレベルでは多様な利害が入り込んでいても、そのもとで実施される事業レベルでは必ずしもそうした利害が入り込むわけではない、という示唆を得た。この地域へのインタビュー調査に関しては、ケース論文としてまとめる予定である。 学会報告は、国内の学会で行った。その内容は、「バイオマス・ニッポン総合戦略」を事例として、組織横断型プロジェクトの成立過程で展開される「意味の構築過程」である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、既存研究のレビュー及びインタビュー調査の実施、成果公開(論文執筆及び学会報告)を平成29年度に行う予定であった。既存研究のレビューに関しては、当初の計画以上に進めることができた。当初は大型プロジェクトに関する研究のレビューを行う予定であったが、そのレビューに加え、正当性に関する既存研究のレビュー作業も実施した。 インタビュー調査は、行政官を対象として行う予定であったが、アポイントメントを取ることが難しかったために、研究計画に従い、対象者を変更しインタビューを実施した。 成果公開に関しては、国内学会である組織学会での報告を予定していたが、政策的な含意を充実させることを目的として、現役もしくは元行政官も参加する『研究・イノベーション学会』で報告を行った。また論文での成果公開に関しては、日本語で執筆することが当初の計画であったが、日本語及び英語で論文を執筆し、それを学術誌へ投稿する前段階として、国内外の研究者へ送付し、フィードバックを得ている。そのフィードバックをもとに論文に修正を加え、平成30年度中に国内もしくは海外の学術誌へ投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、引き続き大型プロジェクト及び正当性に関する既存研究のレビュー作業に加え、インタビュー調査を実施していく予定である。また、研究成果の報告・公刊の機会を増やしていく予定である。 インタビュー調査に関しては、現在調査している自治体の方々への追加的なインタビューに加え、「バイオマス・ニッポン総合戦略」に行政官として関与していた方々を対象として行う予定である。前者の方々については、すでにインタビュー実施の内諾を得ている。 研究成果の報告・公刊については、学会報告と論文投稿を行う。平成29年度に実施した研究の成果は、組織論研究者や行政学研究者、実務家も多く参加する国際カンファレンスで報告する予定である。また、そこで得たフィードバックをもとに論文を精緻化し、国内もしくは海外の組織論領域の学術誌へ投稿する予定である。
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備考 |
2017年6月13日「同床異夢の科学技術イノベーション政策形成と暴走:バイオマス・ニッポン総合戦略を題材に」『第57回STIG PoPセミナー』(東京大学本郷キャンパス) 2017年11月2日「省庁横断型政策とエビデンス」『JSTプロジェクト「政策過程におけるエビデンス記述・解釈に関する調査研究」第2回研究会』(東京大学本郷キャンパス)
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