マウス片側後肢血流遮断直後より生じる両側中枢神経系の応答増強に一酸化窒素(NO)の関与が強く示唆される現象について、脊髄レベルに存在する神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の関与を調べるため、nNOSノックアウトマウスとwild typeマウスの両群間で体性感覚野および脊髄のフラビン蛋白蛍光応答を調べた結果、nNOSノックアウトマウス群では、血流遮断時の応答増強が有意に抑制された。 また、脊髄レベルで産生されるNOを視覚化するため、NOの蛍光標識物質であるジアミノフルオレセイン-FM(DAF-FM)を脊髄を被覆する形式で投与したところ、片側後肢を虚血状態としたマウスにおいて蛍光応答の増強を認めたが、Sham群のマウスでは蛍光しなかった。また、虚血状態としたマウスでは、いかなる時間帯でも虚血側の蛍光応答が非虚血側と比較して有意に増強して認められた。以上より、片側後肢の血流遮断後の両側蛍光応答増強には脊髄レベルに存在するnNOSが関与していること、またNOの高い拡散性など何らかの機序で両側性に神経活動を増強させていることが強く示唆された。 これまでの実験結果をまとめ、2017年11月にWashington D.C. で開催されたSociety for Neuroscienceにおいてその成果を発表した。 また現在は、nNOSと血流遮断中の神経応答増強に関与があると過去に報告されたⅡ型代謝型グルタミン酸受容体(GroupⅡ mGluR)との組織学的関与を調べるため、蛍光免疫染色の抗体を選別し、実験に取り掛かっている。
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