研究課題/領域番号 |
17H06694
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
枝並 直樹 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80804567)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 歯髄myofibroblast様細胞 / TGF-β1 / M2マクロファージ |
研究実績の概要 |
新生象牙芽細胞の分化機序は、現在でも断片的にしか解明されていない。このことは、歯髄保存療法の発展に大きな障壁となっており、より効果的な歯髄保存療法を確立するためには、さらなる分化機序の解明が必要不可欠である。 近年、新生象牙芽細胞の前駆細胞として、歯髄myofibroblast様細胞の存在が新たに明らかとなったことから、本研究では、歯髄(幹)細胞から歯髄myofibroblast様細胞への形質転換に着目し、歯髄創傷治癒のメカニズム解明を目指した。 今年度は、主にヒト歯髄初代培養細胞を用いてin vitroにおける解析を行った。Transforming Growth Factor-β(TGF-β)1, Basic fibroblast growth factor, Platelet Derived Growth Factor他を作用させた場合、TGF-β1が最も効果的に歯髄(幹)細胞から歯髄myofibroblast様細胞への形質転換を誘導することが明らかになった。具体的にはmyofibroblastのマーカータンパクであるαSMAの発現量が4倍程度まで増加した。さらに、この細胞を石灰化誘導培地で継続培養すると、高い石灰化能を示した。これらの実験結果は、TGF-β1が、歯髄(幹)細胞から新生象牙芽細胞への分化を促進しうることを示唆している。 このため、歯髄の治癒過程において、どの細胞がTGF-β1を産生しているかについて、さらに検討を加えた。この結果、治癒過程初期において創面に集積するM2マクロファージがTGF-β1の主な産生細胞である可能性が示唆された。M2マクロファージの活性化はTGF-β1産生の増加を介して、歯髄治癒を促進する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年10月、myofibroblast様細胞の形質転換誘導因子を特定する実験の結果、予想に反して、ラット由来歯髄初代培養細胞は極めて容易にαSMA陽性のmyofibroblast様細胞に形質転換してしまうことが判明した。これでは、各種生理活性物質添加の有無による効果を比較できないため、他の細胞ソースで解析を行う必要性が生じた。 このため、In vivo実験予定の種とは異なるが、臨床応用への移行を念頭にヒト由来歯髄細胞を用いることに計画を変更した。ヒト由来細胞の研究使用に際しては倫理診査申請等が必要であり、許可が得られるまでに期間を要したことで、研究に遅れが生じた。しかしながら、現在までにヒト歯髄細胞の培養環境は整えられ、解析を開始できており、今後の伸展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定されたラット歯髄細胞からヒト歯髄細胞を使用することに計画を変更した。これにより、やや研究は遅れているが、研究手法は既に確立しており、期間内に研究成果を得る事が期待できる。今後は、in vitroで形質転換誘導効果が認められた生理活性物質に関してin vivoで効果を検証していく予定である。
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