水(水および電子源)と二酸化炭素(炭素源)から炭化水素を再生するための無機触媒材料の設計・評価を行った。メソ多孔質有機―無機複合規則構造体を前駆体として600度で焼成することで金属酸化物材料を得、その基礎物性をXRD、FE-SEM、ならびに電気化学測定により評価した。その結果、亜酸化銅による準安定構造が生じていることが分かった。次に、この触媒材料を利用した電気分解実験を二酸化炭素雰囲気下で行ったところ、可逆水素電極 (reversible hydrogen electrode (RHE)) に対して-0.6 V程度の印加電圧においても炭化水素生成物を安定して生成するとともに、13C-標識二酸化炭素を用いた電解実験及び引き続く核磁気共鳴分光法実験 (13C{1H} NMR) により『二酸化炭素が多電子/多プロトン還元を受けることによる炭化水素合成』を確かめた。また、40時間以上の活性を持続する触媒表面の創製をこれまでに達成した。これに並行して酸化セリウムへのランタンイオンの添加による光触媒活性と構造相関についての知見が得られたため、これについても詳細な検討を行った。1200度焼成試料においては、もとのセリア相と上述の均一固溶相両方のX-線ならびに電子線回折が得られており、TEM測定ならびにHAADF-STEM/EDSにより両相の確認ならびに両相界面の観測に成功している。電気化学的測定ならびにRaman測定によって、1200度焼成試料においても両方の相・準位の存在が示唆されている。適宜助触媒を担持した試料の光触媒活性を評価したところ、1200度付近で焼成した試料で顕著な触媒活性が得られた。上述の議論により、2つの相が共存し、両相間で電位差があることからこの勾配を利用した電荷分離が進行し、これにより1200度焼成試料では光触媒活性が顕著であったと考察している。
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