研究課題/領域番号 |
17H06704
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中尾 裕之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (00805020)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | フリップフロップ / スクランブラーゼ / リン脂質 / 小胞体 / 蛍光 |
研究実績の概要 |
本研究は、小胞体膜スクランブラーゼを同定し、小胞体膜フリップフロップ促進機構を解明することを目的とする。申請者はこれまでに、ヒト小胞体膜タンパク質EDEM1の膜貫通配列ペプチドが高いスクランブラーゼ活性を示すことを明らかにした。EDEM1の配列から、2つの親水性アミノ酸がαヘリックス上で同じ側に位置することが、フリップフロップを顕著に促進する性質ではないかと仮説を立てた。2017年度は、2つの親水性アミノ酸残基Arg・Hisの間隔が1~9残基のモデル膜貫通ペプチドを合成した。CDスペクトルから、すべてのペプチドが膜中でαヘリックス構造を有していたため、膜貫通構造をとっていると推察される。これらのペプチドのスクランブラーゼ活性が、ArgとHisのらせん軸まわりの回転角に対して周期的に変化し、ヘリックス上でArg・Hisが同じ側に位置するペプチドが高い活性を示すことを明らかにした。高い活性が見られたArg・Hisの間隔3残基のペプチド配列をもとに、Arg・Hisの間隔を固定して、2残基の位置を様々に変えたペプチドの活性を評価したところ、Arg・Hisが疎水性領域の中央付近に存在するペプチドでは活性が見られたが、膜表面付近に近づけると活性が失われた。このことから、2つの親水性アミノ酸残基の側鎖が脂質膜の疎水性領域に位置することがフリップフロップを促進するのに重要であることが示唆された。また、EDEM1が小胞体膜スクランブラーゼであることを明らかにするために、siRNAを用いてEDEM1をノックダウンするための条件設定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想通り、Arg・Hisのらせん軸周りの回転角に依存してペプチドのスクランブラーゼ活性が変化し、2残基がヘリックス上で同じ側に位置する場合に高い活性を示すことを明らかにすることができた。また、親水性アミノ酸残基が膜中のどの位置にある場合にスクランブラーゼ活性を示すのかについても新たな知見が得られており、本研究課題は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
モデル膜貫通ペプチドの系については、Arg・His残基を他の親水性アミノ酸残基に置換したペプチドを合成し、これまでに見られたスクランブラーゼ活性がArg・His残基に特異的なものなのか、他の親水性アミノ酸残基でも同様に活性が見られるのかを明らかにする。 細胞を用いた系については、引き続きHEK293細胞においてEDEM1のノックダウンの条件設定を行うとともに、EDEM1発現量の多いTHP-1細胞を用いてEDEM1のノックダウンを行うことを検討している。
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