研究課題
研究活動スタート支援
本研究課題では、1年半にわたって、中英語で書かれた聖人伝写本の編纂から、中世後期イングランドにおける中世後期イングランドのナショナル・アイデンティティの形成について考察した。イギリスの聖人・聖女伝を収めた中英語・ラテン語聖人伝の全体像を把握し、研究対象となる写本の選定を行い、ケーススタディとして、北部イングランドの聖女伝に焦点を当てた。その後、未刊行テクストの転写を行い、テクストの精読によって、中世後期イングランドにおけるナショナル・アイデンティティの形成の一例を示した。
中世英文学
本研究の学術的意義は、あらゆる時代の文学がさまざまな方法で描いてきた「イングランド」という国家と国民意識の形成を、中世の聖人伝テクストからその一例を示したことである。また、その過程で、これまでに校訂本や校訂テクストとして出版されてこなかった未刊行テクストを焦点を当て、海外所蔵の中世写本を精査し、資料を用いることで、これまで見逃されてきたテクストの存在を示すことができた。