研究課題/領域番号 |
17H06714
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中村 重孝 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (00786775)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 19F NMR / 核酸類同時検出 / 光架橋反応 |
研究実績の概要 |
核酸類の検出における検出法として蛍光分子を用いた手法が多く報告されている。しかし、蛍光分子を用いた場合はスペクトル域に一定の広がりを有するため、複数の核酸類を同時に検出する際には蛍光波長の重なりがノイズとして検出されてしまう。本研究では尖鋭なピークをもつ19F NMRに注目し、光架橋による19F NMRのケミカルルシフの変化を利用した核酸類同時検出を行った。本年度は核酸類の同時検出に利用可能な光応答性核酸群の合成及び、光架橋により誘起されるケミカルシフト変化の評価を行った。新規光応答性人工核酸として3種類の3-ビニルカルバゾール誘導体の合成を行った。各光応答性人工核酸とトリフルオロメチルチミジン(TFT)との光架橋反応を行い、その10F MRシグナルを測定した。その結果、いずれの光応答性人工核酸を用いた場合にも光架橋反応によりTFT由来の19F MRシグナルを8 ppm程度大きく変化出来ることが分かった。さらに、各光応答性人工核酸の有する置換基により変化後のケミカルシフトが変化していることを見出した。既存の3-シアノビニルカルバゾールを合わせ、検討を行った光応答性人工核酸4種類の中から3種類の光応答性人工核酸を用い、混合系で光架橋反応を行った。その結果、3種類の19F NMRシグナルを確認し、これらピークはベースライン分離が可能であることを見出した。光架橋による大きなケミカルシフトの変化とともに、置換基によるケミカルシフトの変化を組み合わせることにより核酸類の同時検出が可能となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は核酸類の同時検出に利用可能な光応答性核酸群の合成及び、光架橋により誘起されるケミカルシフト変化の評価を行った。当初予定していたフッ素源を有する光応答性人工核酸である3-トリフルオロメチルビニルカルバゾールの光架橋反応及び、19F NMR測定によるケミカルシフトの変化を評価したところ、光架橋反応の過程でトリフルオロメチル基の分解が確認されたため、新たな光応答性人工核酸としてOHVK、NH2VK、OMeVKの3種類の光応答人工核酸の合成を行った。各光応答性人工核酸を含むDNAとフッ素を含むトリフルオロメチルチミジン(TFT)を含むDNAを混合し、光照射を行ったところ、光照射前後で8 ppmの大きなケミカルシフトの変化が確認された。OHVKを用いた場合には-70.6 ppm、NH2VKを用いた場合には-71.0 ppm、OMeVKを用いた場合には-71.2 ppmにシグナルを確認した。そのため、これら光応答性人工核酸を用いることにより、核酸類の同時検出が可能となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の成果より、核酸類同時検出に用いることができる光応答性人工核酸の組み合わせを決定した。当初予定していたフッ素源を有する光応答性人工核酸において、光照射によるフッ素の脱離が確認されたため、新たな設計のもとフッ素源を有する光応答性人工核酸の設計・合成を行う。また、同時検出に利用可能な光応答性人工核酸の組み合わせを見出したため、それらを用いた核酸類の同時検出を行う。ハイブリダイゼーションチェインリアクション(HCR)を用い、光照射を行った際に標的核酸が存在した場合にのみケミカルシフト変化が誘起される系の構築を行う。現在予定している3種類のmiRNAに対してそれぞれが干渉しない直交性を有する配列設計を行う。それに加え、細胞内での検出に向け、ホスホロチオエイトDNAを合成し、細胞内での同時検出の検討を行う予定である。
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