本研究の目的は,夫婦が抱く虐待不安の程度や背景の違いを明らかにすることである。そのため,2~3歳児を育児中の夫婦27組を対象に,質問紙調査と面接調査を実施した。まず,質問紙調査の結果,虐待自己評価不安,虐待他者評価不安ともに妻の方が高く,夫は虐待自己評価不安と夫婦関係満足との間に,妻は虐待自己評価不安と自分の家事・育児参加との間に負の相関を示した。続いて,夫婦関係満足に着目し抽出した2組の夫婦の面接調査から,育児や家族関係の認知的処理の夫婦間での違い,および夫婦の育児への物理的な参加というよりも情緒的な交流の重要性が示唆された。
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