研究実績の概要 |
本研究では、2つの空間を持つホスト分子を構築し、空間同士での構造情報の伝達による機能開発を目的とした。生体内では、たんぱく質により分子認識・捕捉が頻繁に行われている。また、分子の捕捉によりたんぱく質の構造が変化し、その構造変化が伝達し、遠隔部位の分子捕捉能を調節する(アロステリック効果)ことも可能である。人工的に合成した分子を用いた場合には、極性の分子の水素結合の様な比較的強い相互作用を利用することで、アロステリック効果を実現している (M. Takeuchi, et al. Acc. Chem. Res., 2001, 34, 865)。そのため、非極性分子(炭化水素や芳香族)を認識した、アロステリック効果の実現は困難であった。一方で、1 nm程度の空間を有する人工のホスト分子は、水系溶媒中で疎水効果やπーπ、CH-π相互作用などの弱い相互作用により、非極性分子を内包する (M. Yoshizawa, et al. Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 3418)。これまでに研究代表者は、剛直なボウル状分子(K.Yazaki, et al. Chem Commun. 2013, 49, 1630)やチューブ状分子(K.Yazaki, et al. Nature Commun. 2014, 5, 5179)を構築し、アントラセン環に囲まれたナノサイズの空間を利用して、非極性分子の包接を報告してきた。そこで、本研究では、2つのナノ空間を有する構造体の構築とその分子包接能を明らかにすることを目的とした。本年度、2つの空間を持つダブルカプセルの構築と、2つの空間に2種類の異なる有機化合物の内包を報告した(K.Yazaki, et al. Nature Commun., 2017, 8, 15914)。
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