研究実績の概要 |
本研究では、2つの空間を持つホスト分子を構築し、空間同士の構造情報の伝達による機能開発を目的とした。生体内では、分子の捕捉によりたんぱく質の構造が変化し、これが伝達し、遠隔部位の分子捕捉能を調節するアロステリック効果が知られている。一方で、人工分子による非極性分子(炭化水素や芳香族)を認識した、アロステリック効果の実現は困難で あった。これまでに研究代表者は、剛直なボウル状分子(K.Yazaki, et al. Chem Commun. 2013, 49, 1630)やチューブ状分子(K.Yazaki, et al. Nature Commun. 2014, 5, 5179)を構築し、非極性分子の包接を報告してきた。そこで、本研究では、2つのナノ空間を有する構造体の構築とその分子包接能を明らかにすることを目的とした。昨年度、2つの空間を持つダブルカプセルの構築と、2つの空間に2種類の異なる有機化合物の内包を報告した(K.Yazaki, et al. Nature Commun., 2017, 8, 15914)。本年度は、波及効果を高めるため、一般向けにダブルカプセル構造体についての概説を執筆した(月刊マテリアルステージ, 2018, 18. 56-61)。また、本研究から派生して、多環芳香族骨格を有する筒型分子の構築に関する研究を行い、特異な固体蛍光特性を明らかにした。具体的には、昨年報告した3つのアントラセン環を有する分子チューブ(Chemistry-An Asian Journal 2018 13, 515-519 .)を改良し、ペンタセン環を有する分子チューブを構築の固体蛍光を明らかにした。(Angew. Chem. Int. Ed., 2019, 58, 1115-1119.).
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