研究課題/領域番号 |
17H06722
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
竹谷 晃一 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (70803526)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 橋梁振動 / 減衰比 / RD法 / 振動エネルギー / 加速度応答 / 実橋梁 |
研究実績の概要 |
当該年度は研究目的に示した検討事項の中で,実橋梁における計測実験及びデータ分析を主に行った.具体的には次の2項目の研究を遂行した. 【検討事項I】交通環境と振動エネルギーの関係の分析 橋梁構造物の振動エネルギーと交通による外乱の影響を考慮し,その関係性を評価するため,実際の橋梁に複数の加速度センサを設置した計測実験を開始した.本研究で対象とした橋梁は,一般道路橋で標準的なRC床板鋼I桁の単純桁とした.計測は次年度も継続して行っていくため,検討事項IIで提案するRD法を用いた減衰同定手法を用いた分析結果のとりまとめは次年度に行う予定である.一方,過去に別の橋梁で同様の計測を行ったデータを用いて,交通環境と振動エネルギーの関係について分析を行った.その結果,RD法を用いた提案手法によって同定した減衰比を用いて,橋梁の振動エネルギーの分析を行い,交通環境によって振動エネルギーが変化することを示した.今後,さらに振動エネルギーの分析を行い,外乱の影響を考慮した構造物の状態検知手法を提案していく. 【検討事項II】橋梁構造物の劣化損傷が構造減衰に与える影響評価 交通振動によって励起される橋梁振動から,橋梁の減衰比をRD法を用いて推定を行った.交通車両の種類や速度などによって算出される減衰比のばらつきを考慮した分析を行うため,計測条件の検討を行った.その結果,分析に必要なデータ長や窓長を明らかにし,RD法によって処理することで交通環境によるばらつきを平滑化することが出来ることを明らかにした.また,橋梁構造物の劣化損傷が構造減衰に与える影響を把握するため,はじめに単純な模型橋梁を用いた実験を行った.その結果,支承部の劣化が減衰能に与える影響がもっとも顕著であった.今後,数値シミュレーションや実橋梁での計測実験からさらに分析を進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度から実施予定であった実橋梁での加速度計測を開始し,計測期間の途中ではあるがデータを取得できることを確認した.懸念事項としては,対象橋梁の振動レベルが当初想定していたより微小であるため,分析精度を考慮すると計測システムの再検討が必要な可能性が挙げられる. 一方,過去の実橋梁での計測実験データを用いることで,計測実験と同時並行で橋梁の減衰比を同定するシステムの構築を行った.その結果,適切なデータ長や窓長といったパラメータを決定し,交通環境下でも安定して構造減衰を同定することができた.数値シミュレーションによる分析については現在構築中であるが,その前の基礎的検討として単純な模型橋梁を用いた実験を行い,提案手法の可能性について検討を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は外乱を考慮した分析手法の提案であり,実橋梁においてなるべく多くのデータを取得することが重要であるため,当初の計画通り実橋梁における計測実験を引き続き行っていく.構造減衰の同定手法においては,他の橋梁に適用する場合の一般性に関する検討や,気象条件や気温や交通環境の季節変動に関する検討を今後進めていく.また,橋梁の劣化との関係を提案するため,模型実験や数値シミュレーションによる検討を継続して進めていく予定である.
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