研究実績の概要 |
Quercetinは様々な癌細胞に対して転移の原因となる遊走と浸潤を阻害することが知られている。申請者はこれまでにquercetinのメチル化体がquercetinよりもはるかに強力な遊走阻害活性を示すことが明らかとした。さらにこの活性の違いが,メラノーマ細胞内のタンパク質と本化合物との相互作用の変化によるものであると推測した。そこで本研究ではmethylquercetinと結合するB16メラノーマ細胞内のタンパク質の同定と相互作用を調査することで,本化合物の作用メカニズムの解明を目指した。 合成したmethylquecetinの3位と4'位のメチル基がメラノーマ細胞における抗遊走阻害に重要であることが判明しているため ,この部位がタンパク質との相互作用に重要であると考えられる。そのため活性に関与しない7位と担体を結合して,3位および 4'位と結合するタンパク質をビーズで沈降させ単離する。 Quercetin及び3,4'-O-dimethylquercetinの7位を選択的にアミノ化して,活性化エステル基をもつビーズでアミド結合により カップリングさせてquercetin誘導体結合ビーズを調製する。申請者はすでに7位に水酸基をもつmethylquercetinの合成に成功している。Quercetinの水酸基 の中で7,4'及び3位が,反応性が高いためアミノ化剤が高確率でメチル化されていない7位水酸基と反応することが予想できた。しかし,副生成物が生じ,反応速度も遅かった。このためboraxを用いて3-O-methylquercetinのB環の水酸基と5位の水酸基を保護し,2-(boc-amino)ethyl bromideを用いてアミノエチル基を7位選択的に導入する方法を検討した。その結果7位選択的に良好な収率でエチルアミノ基の導入に成功した。
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