冷凍野菜の食感の悪さは多くの消費者が感じており、積極的な購買を妨げている。本研究は、加工技術の高度化への指針を立てるため、食感変化メカニズムの解明を目的とする。第一に、細胞壁を構成する多糖類、細胞膜の構造についてブランチング処理、凍結処理による変化を原子間力顕微鏡やインピーダンス解析を駆使した収集を目指した。特に、インピーダンス解析においては、青果物の細胞・組織状態を細胞膜容量、細胞外抵抗、細胞内抵抗といった定量的な変化として捉えることができた。また、加工操作を経た青果物から水溶性、キレート可溶性、希アルカリ可溶性のペクチンを順次抽出し、その組成分析や原子間力顕微鏡での観察によってペクチン状態の変化の定量把握を試みた。第二に、細胞レベルでの構造・物性と、組織や個体レベルでの食感との関係性についての解明を目指した。本研究では、低温ブランチングによってペクチンの脱メチル化を促したニンジン試料に対して高温加熱を加え、その際の軟化傾向について速度論的な解析を行なった。この時、低温ブランチング条件によって軟化傾向に差が生じ、ペクチン状態による寄与が伺えた。また、インピーダンス解析によって低温ブランチング後の細胞・組織状態を推察し、細胞破壊による食感変化との関連性を示した。さらに、冷凍野菜製造工程における重要な指標であるペルオキシダーゼ活性の変化についても測定を加え、最適な加工条件構築のために必要な知見を得た。
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