研究実績の概要 |
当研究が目的とするのは、戦前日本の帝国主義と観光の関係を、世界の映像アーカイブで再評価・保存が進む非劇場映画の調査を中心に映像学の見地から明らかにすることである。前年度で重点的に調査したアマチュア旅行映画に加えて今年度は、観光宣伝映画に対象を拡大したトラベローグジャンル全般の調査した。(1)文献資料調査:国内外の公共機関で官公庁や外郭団体刊行物を調査するとともに復刻版やデータベースを含む戦前映画雑誌や雑誌の網羅調査を行った結果、観光宣伝映画を規定する言説を「通俗教育」「弘報」「宣伝」の3つに限定した(成果A)。(2)映像作品のデータベース作成と視聴:高麗大学、米国議会図書館、米国ジョージ・イーストマン・ミュージアム、神戸映画資料館、東宝ステラを含む国内外のアーカイブで視聴した映像をデータベース化して分析し、「大日本帝国」の観光空間をトランスナショナルな文脈で捉え直した(成果B)。(3)フィルムアーキビストと意見交換を重ねることで、文献学的なアプローチで現存プリントの所蔵経緯を明らかにする着想を得た(成果C)。(4)研究成果の発表:国内外の非劇映画研究に関する二次資料を網羅調査し、それに対して成果A、B、Cを検討する口述発表を米国の国際学会(Visible Evidence)で行ない(研究実績A)、さらに論文を国際学術誌(査読あり)に投稿した(研究実績B)。さらに前年度の重点課題であるアマチュア映画雑誌をグローバルな範囲に拡大して調査するとともに、その結果を国際学会(Cultural Typhoon,AAS, ワールドシネマの新地平)で口述発表した(研究実績C)。前年度、後年度の研究調査をもとにフィルム・アーカイブに関する考察をまとめて英語編著『Routledge Handbook of Japanese Cinema』に投稿した(2019年末刊行予定)。
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