(1)位相力学系や測度空間上の群作用の拡大から生ずる作用素環の包含(接合積構成法)に対して,自由という自然な状況の中で,包含の間に現れるすべての作用素環がもとの力学系の情報から自然に生じるもののみである,という強固な制約を発見した.これにより,従来計算がごく限られた状況でのみ可能であった,「中間作用素環がなす束」の具体的計算が可能なクラスを飛躍的に広げることができた. (2) 非可分作用素環の構造分解の剛性について,Popaの古い技術を用いて研究した.具体的には,近似的有限次元(=有限次元環の帰納極限)である単純作用素環で,テンソル積分解,正則可換部分環,漸近的中心列といったものを全く持たないものを構成することができた.これは可分の場合にもつ,よく知られていて重要な数々の柔軟性を裏切る決定的な現象である.類似した現象は,集合論を背景に作用素環論を研究している勝良らのグループにより,部分的な結果が連続体仮説のもとで検証されていたが,我々の解析はZFC内で行われており,特に彼らが掲示していた未解決問題をより強い形で完全に解決した. (3)局所コンパクト群のAPとその群作用に付随する接合積C*環の関係について,期待すべき定理を証明した.これは(1)で得られた定理を局所コンパクト群に拡張するために必要不可欠な最初の足掛かりである.我々の解析はvon Neumann環の設定でも通用する方法であり,特にHaagerup-Krausの定理に,非有界荷重など入り組んだ道具を必要としない簡潔な新証明を与える.この研究のおまけとして,「APは完全性を導くか?」という,離散群の場合にはよく知られていたが,一般の局所コンパクト群については長年未解決のまま残されていた問題を肯定的に解決することができた.これよりAPをもつ第二可算局所コンパクト群について,Baum-Connes予想の単射性が従う.
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